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忘れ物が届きます

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大崎梢さんの本屋さんじゃない話。記憶をたどり人の心の温かさに辿り着く。

要約

  • 沙羅の実

不動産営業マンの小日向は、顧客の家で小学校時代の彼を知っているという元教師の男と出会う。小日向が小学生だったころ何者かに監禁された事件と、同じ日に友人の父が事故死していた出来事に話がいたる。

元教師の男は「あの事件で二つの宿題をもらった」と言う。

  • 君の歌

高校の卒業式を終え一人で帰途についていた湯沢は、ほとんど話したことのないクラスメートの高崎から声を掛けられ、中学時代の事件について話をしてきた。

中学3年生の女生徒が美術室で頭に袋を被せられ、デッサン用のワインボトルで殴られ意識を失った。現場にいた不良グループが疑われたが、彼らは犯行を認めなかった。

  • 雪の糸

カフェ店員の比呂美は、別れを決めた恋人たちの話を耳にする。

昨年の春、花見から戻った男は「見たいテレビ番組があるから9時に起こして欲しい」と頼んだ。彼女は長電話で彼を起こしそびれ、1時間後に録画を見せて事なきを得たのだと告白した。

その日彼は先輩から「会社に戻って仕事をするので10時に電話をして欲しい」と頼まれていた。彼は10時に電話をしたつもりだったが、実際には11時だったことが分かる。

先輩の「それでよかったんだ」という言葉の意味が変わった。

  • おとなりの

小島邦夫は隣家の須田家が引っ越した後の週末、床屋の店主から「10年前の強盗殺人事件の日、自転車に乗っている邦夫の息子を見た」という話を聞く。

事件の日、息子は風邪で学校を休んでいた。強盗殺人の現場近くで彼のレンタルビデオ会員証が見つかったため警察の取り調べを受けたが、隣家の須田夫人がアリバイ証言をしてくれたおかげで容疑が晴れた。その後被害者と因縁のあった男が真犯人として逮捕されていた。

だが、床屋の証言で10年前の事件に絡む新たな真実が見えてくる。

  • 野バラの庭へ

「なんでも代行業」の小さな会社に勤める 中根香留は鎌倉の邸宅に住む老婦人 外山志保子の回顧録作りを手伝うこととなった。

裕福な実業家の家に生まれついた志保子だったが、自分の兄との結婚直前に姿をくらませた統子のことを気にしており、回顧録の内容もその時の顛末が中心だった。

香留は数週間にわたって志保子をインタビューし、途中経過を上司に報告していたが、話が佳境を迎えたころ驚くべき事件が起こる。

感想・考察

普段の大崎梢さんの「本にまつわる日常系ミステリ」ではなく、誘拐や強盗殺人など結構ガチな事件を扱っている。それでも「人に対する暖かい目」が感じられる作品になっている。

特に「野バラの庭へ」は好きな作品だ。鎌倉・江ノ島の風景や、丁寧に手の入った庭の美しさなど、目に浮かぶような情景描写が素晴らしい。

最後に読者を驚かせる仕掛けを組み込みながら、登場人物の想いの切なさを感じさせる。名作だと思う。

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