ビジネスマンへの歌舞伎案内
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「歌舞伎に教訓なんてない、好きなように楽しめ!」
そういってもらうと、少し敷居が下がった。
要約
歌舞伎を気楽に楽しもう、という入門書。
1. 現代人に歌舞伎が必要なわけ
・歌舞伎はビジネスとして成立している
歌舞伎は補助金などは受けずにビジネスとして自立している。経営努力があり「生きている」ビジネス。
・歌舞伎は分からなくても楽しめる
昔の話で言葉も分かずらく、会社勤めには行きにくい上演時間で敷居が高いものと思われている。しかし、無理に分かる必要はなく、気楽に楽しむ程度のスタンスがちょうどいい。
・日本人必須の教養としての歌舞伎
長いものでは300年間変わらないことが一つの魅力。同じ演目を見て自分の変化を感じることもできる。文化的素養として歌舞伎の知識を身に付けるのは少しでも早いうちの方がいい。
・リラックスできる場としての歌舞伎
歌舞伎には教訓も何もない。少なくとも現代題は通用しない価値観でそこから何かを学ぼうとする必要はない。衣装や音楽などそれぞれが楽しみを見出せばいい。
2.知らないと恥ずかしい歌舞伎の常識
・歌舞伎の分類
長唄や踊りを見せるのは「舞踊」で、ストーリーがあるのが「狂言」
「狂言」は江戸時代の現代劇「世話物」、戦国時代を振り返って作られた「時代物」、明治以降に創られた「新歌舞伎」に分けられる。
内容による分類もあり、荒々しく豪快な「荒事」、優男がメインとなる「和事」、悲劇的な状況で苦悩する「実事」など。
・演目の一部だけが上演されている
一つの演目を通して行うことはまれ。たとえば忠臣蔵だとフルで10時間以上となるので、人気のある4段目、5段目、6段目などを抜き出すことが多い。
・定番キャラ
基本的には全ての役を男性が演じる。
立役-男役。白塗は良い人、赤が悪人、一般人は肌色。極悪人も白。
花魁-女役で最も派手、30㎏以上の衣装を身に付ける。
赤姫-武家の姫で赤井振袖を着ている。
・「大向こう」
客席から「○○屋!」と声をかける大向う。熟練の技があるので一般客はマネしない方がいい。
・歌舞伎は役者を見に行くもの
何代目市川何某 などの紹介。。
3.主な3演目
・仮名手本忠臣蔵
赤穂浪士の吉良邸討ち入りを題材にした時代物。時代設定は室町に直されている。
・菅原伝授手習鑑
菅原道真が太宰府に左遷された史実を基にした時代物。
・義経千本桜
源義経は語り手で主人公ではない。平知盛と庶民、キツネが化けた男が主人公の時代物。
4.歌舞伎をスマートに楽しむ
東京銀座の歌舞伎座、京都四条の南座、大阪の松竹座が3台拠点。歌舞伎座だけが常設。
歌舞伎座は午前午後の2部構成。
歌舞伎の1年は11月の顔見世から始まる。イヤホンガイドは遠慮せずに使うべき。ガイドブックである「筋書」は必須。幕間の時間は短いので弁当は予約しておくか持ち込む。
5.ビジネスに歌舞伎を役立てる
・粋な生き方働き方
世話物にはアウトロー的で「軽み」のある人間が描かれる。 江戸時代は基本的に平和で、親切で優しい善人が多かった分、奔放な生き方が憧れの対象となった。江戸時代の「粋」を伝えている。
・舞台はビジネスの縮図
歌舞伎に「意味」を見出そうとすべきではない。必ずしもいい人がいい思いをするわけではなく、全ての出来事に理由があるわけでもない。
ビジネスの世界でも不確実性を排除しようするが、混沌や無秩序を含めて把握する必要がある。
歌舞伎は実際の世の中の、またビジネスの縮図である。
・ブランドとしての歌舞伎
歌舞伎は数百年前から「変わらない」ことでブランド価値を増してきた。歌舞伎にも変わる部分はあるが、「何を変え、何を変えないか」が重要。
感想・考察
「主君のために実子の命を差し出そう」とか「命を投げ出して親の仇討ち」だとか言われても、今の私には共感するのは難しい。
それでもほんの数世代前にはそういう考えがまだ生きていたという事実は、認識しておくべきなのだろう。逆に現代人の感性も数世代下れば理解不能なものになるはずだ。
「変わらない」ものを見ることで世界は「変わっている」ことを認識できるし、もしかしたら「ずっと変わらないもの」が見つかるかもしれない。
そういう意味で「分からなくてもいいから、とにかく観ておく」というのは意味のあることだと思った。
会社勤務だと難しい時間設定で観に行きにくいし、そもそも日本に帰る機会が少ないのだけれど、まずは Youtubeでも見てみよう!