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巴里マカロンの謎

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帰ってきたダークヒロイン 小佐内ゆき。

甘くないスイーツの物語。

あらすじ

小市民を目指す高校生 小鳩常悟朗と小佐内ゆき。スイーツを巡る4つの連作短編集。

  • 巴里マカロンの謎

小鳩は小佐内に連れられ、名古屋に新装開店したパティスリーに行く。ティーセットでは3つのマカロンを選べるため小佐内は散々悩み決めたが、手を洗っているうちに届いたセットには4つのマカロンが乗っていた。

誰が何の目的で「もう一つのマカロン」を小佐内の皿にのせたのか。店員に効いてしまうのは「相手の思うつぼ」だとして、観察と推理で真相を探っていく。

  • 紐育チーズケーキの謎

小佐内と小鳩は名古屋のパティスリーで親しくなった中学生、古城秋桜の中学校で行の文化祭に向かう。

秋桜の所属する「お菓子作り研究会」でニューヨークチーズケーキを食べたあと、小佐内は秋桜と校内を見て回っていた。

二人が校庭のキャンプファイヤーでマシュマロを焼こうとしていたところ、男子生徒がぶつかってきて荷物がぶちまけられる。そしてその後やって来たガラの悪い男子生徒たちに絡まれ「CDを出せ」とすごまれてしまう。

小佐内の荷物にCDがないことを確認した男たちは、小佐内を拉致してどこかに連れて行ってしまう。

一部始終を秋桜から聞いた小鳩は、小佐内がどこにCDを隠したか、何の目的があって拉致されたのかを推理していく。

  • 伯林あげぱんの謎

小佐内は教室の窓際にたたずみ涙を流していた。

小鳩が新聞部にアンケートを持っていくと、友人の堂島健吾たち4人の新聞部員たちが黙りこくっていた。

聞けば、世界の年越しを紹介する企画で「ベルリーナ・プファンクーヘン(ドイツ風揚げパン)」に一つだけマスタードを入れ食べたのだが、4人とも自分の食べたものにはマスタードは入っていなかったという。

小鳩は関係者から話を聞き、不可能と思われた状況を解きほぐしていく。

  • 花府シュークリームの謎

古城秋桜は、年末に友人たちと飲酒した咎で停学処分となったが、秋桜自身は酒など飲んでいないと言う。小佐内と小鳩は秋桜の同級生たちから話を聞き、秋桜の継母の力も借りて真実を探っていく。

感想・考察

このシリーズは、スイーツを冠したタイトルと人が死なない日常系の謎で、一見ほのぼのした設定だが、主人公二人の冷静な黒さが独特な雰囲気を生み出している。

なかでも「夏季限定トロピカルパフェ事件」と「秋季限定栗きんとん事件」は、米澤ミステリの中でも屈指の出来だと思っている。

本作はタイトルに季節がなく「ナンバリングタイトル外」なのか、事件の内容も控えめで、小佐内ゆきのダークヒロインっぷりは少々抑えられている。それでも「なんだかこいつ、タダモノじゃねぇ」感を醸し出していてワクワクする。

事件は「日常の謎」に限定されているが、謎解きミステリとしては結構本格的で、その面からも楽しめる。

大好きなシリーズなので「冬季限定」を冠した新作が出るのを心待ちにしている。

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