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僕は小説が書けない

僕は小説が書けない

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青春小説 + 小説の書き方。

あらすじ

高校一年生の高橋光太郎は、文芸部二年生の佐野七瀬に入部を迫られる。

光太郎は中学時代に小説を書きかけていたが、完成することなく終わっていた。その時の原稿を七瀬に読まれ、酷評されながらも、また書いてみたいという気持ちが生まれ、文芸部への入部を決める。

光太郎の歓迎会に参加した原田は文芸部のOBで、現在はゲーム会社でシナリオを書き、プロとして活躍していた。小説の書き方を問う光太郎に対し原田は、「自分には才能はないと思って取り組め」、「シナリオ理論を学び普遍的な物語のを把握しろ」とアドバイスする。

光太郎はもう一人の文芸部OB武井とも出会い、食事をたかられたりしながらも「小説は自分の内面から引きちぎるようにして取り出すものだ」、「シナリオ理論何て読むな」と指導する。

その頃、生徒会から具体的な活動成果がない文芸部を廃部にすべしという達しがあり、存続の条件として「学園祭で冊子を発行すること、新人も執筆すること」を条件とされる。

夏休みに入り文芸部員たちは原田と共に合宿に向かい、偶然を装った武井も合流する。文芸部員たちは書けずに戸惑っている光太郎をサポートしようとするが、光太郎は思いを寄せ始めた七瀬が原田と親しくしているのを見て落ち込んでしまう。

ところがその後、原田には婚約者がいること、七瀬はそれを知って原田と付き合っていたことが分かる。

光太郎は「小説を書くための女性心理の取材」と称して、七瀬の原田に対する想いを聞き、自分の七瀬に対する感謝と好意を伝える。

学園祭当日、文芸部員は一丸となって冊子を販売する。

感想・考察

「小説を書く手法」について、理論から入る原田と、精神面から入る武井がで意見を戦わせているが、実際にはその両面が必要なのだろう。

本作自体、ストーリーの定型である起承転結に明確に沿っていて、メタ的な小説書き方レッスンになっている。

起:少し変わった出会い方(光太郎と七瀬、光太郎と原田/武井)

承:徐々に関係が深まる(光太郎と七瀬、光太郎と文芸部員)

転:問題が発生(七瀬への失恋)

結:問題を乗り越えて次のステージへ(失恋の克服)

「なんだか、何かを書いてみたい」と思わされるような話だった。

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