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三体

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自分の価値観、世界観が崩壊するとき、

人は何を根拠に世界と繋がることができるのか。

濃厚なSF作品!!

あらすじ

文化大革命のただなか1967年、葉文潔は、理論物理学者である父の葉哲泰を「反革命分子」として殺され、父を告発した母の紹琳が狂気にさいなまれるのを見る。

その2年後、名誉回復がされないまま大興安嶺で労働に駆り出される。歴史ある大森林の伐採に疑問を感じていた文潔は、記者の白沐霖から借りた「沈黙の春」を読み、白の書いた中央政府宛ての告発状を清書したが、白の裏切りで告発され死の淵をさまよう。

文潔は、父哲泰の教え子だった 楊衛寧に救い出される。文潔が書いた太陽のエネルギー放射に関する論文を買われ、紅岸基地にある巨大なパラボラアンテナを備えた研究施設で働くこととなる。

その40数年後、ナノマテリアル開発者の汪淼は、「科学フロンティア」と呼ばれる団体との接触について取り調べを受け、警察官の史強から「著名な科学者が相次いで自殺している」ことを聞かされる。自殺した科学者の中には文潔の娘、楊冬もいて「物理学は存在しない」という遺書を残していた。

その直後から、汪淼はフィルムカメラで撮った写真や視界の中に、「1200時間のカウントダウン」が見えるようになり、科学フロンティア会員の申玉菲から「ナノマテリアルの研究を止めなさい」と警告を受ける。さらに「宇宙背景放射を観測して見ろ」とも告げる。

汪淼は申玉菲がプレイしていたVRゲーム「三体」にログインする。

そのゲーム世界では、規則正しく日が昇る「恒紀」とランダムになる「乱紀」があり、どのタイミングで「恒紀」が訪れるのかを予測する「暦」が求められていた。

その世界の人々は「脱水」することで「乱紀」をやり過ごすことができるが、安定した時期が短いため、文明を積み上げることができずにいた。

その後、汪淼は自殺した科学者 楊冬の母だった 葉文潔の元を訪れる。文潔は娘に「幼いころから理論だけを教え、生きるための支えを与えらえなかった」ことを悔やんでいた。紅岸基地を離れてから大学で天文物理学を教えていた文潔は汪淼に、宇宙背景放射の観測所を紹介する。

宇宙背景放射を観測していた汪淼は、指定された時間に背景放射があり得ない振幅で揺れているのを目の当たりにする。その振幅はモールス信号でカウントダウンの続きを示していた。

物理法則のベースを崩された汪淼は心を押しつぶされるが、史強の荒っぽい単純さに救われる。史強は「不可思議なできことには必ず裏がある」と考えていた。

話はまた40数年前、文潔が紅岸基地にいた頃に戻る。

文潔には、紅岸基地の目的は敵国の宇宙からの通信を傍受し妨害することにあると説明されていたが、その真の目的は地球外知的生命体の探査だった。

紅岸基地から発信する電波の強度は不十分だと思われたが、文潔は太陽のエネルギー放射で周波数が非連続になっている面に、特定の周波数を数億倍に増幅する効果があることを見出し、強化した電波を発信する。

およそ8年後、文潔は人類史で初めて地球外の知的生命体からのメッセージを受け取る。そこには「これから送られるメッセージに応答すると送信源が特定され、あなた方の星は侵略される。応答するな!」とあった。

感想・考察

「律儀な飼い主から毎日決まった時間に餌をもらっていた七面鳥は、自分の経験を絶対の法則と思い込み、それをベースとした科学体系を作り上げた。

ところがクリスマスの日、エサは与えられず、食べ物として出荷されてしまう」

人間が科学の前提としている公理が不変のものであるという保証はない。それでも無条件に信じるベースが無ければ生きていくことはできない。

 

葉文潔は文化大革命の嵐で、家族や大切な人々を奪われ信頼した人に裏切られ、絶対的なベースを失ってしまう。

一方、汪淼は物理法則の根幹にかかわる部分で揺さぶられ、基盤を失いかけるが、ギリギリのところで世界とのつながりを維持した。

二人の違いは知性ではないし、心の強さでもなく「人とのつながり」だった。

 

SFとしての展開が面白い。

特に前半から中盤の緻密で緊迫感のあるストーリーには引き込まれる。

三体世界のVRゲームで、物理学の歴史をなぞりながら世界の謎を解いていく独特の雰囲気も実に面白い。

後半に入って若干大味になってくるが、それでも先の展開が気になる。

 

3部作とのことだ。続編を早く読みたい!!



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