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最後の医者は雨上がりの空に君を願う 上・下

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「あなたの中に希望がないなら、

あなたのそばにいる誰かの中に、

希望はこっそり隠れている」

がっつり泣かせにくるお話です。。

あらすじ

「最後の医者は桜を見上げて君を想う」の続編。

生きるための戦いを諦めない医師福原と、患者の思いを最大限尊重する医師桐子の二人が織りなす物語。

  • とあるチャラ男の死

溝口駿太は同棲していた 原美穂が HIV陽性だったことを告げられる。駿太から移ったことは間違いない状況で、美穂は駿太にも検査を勧める。状況を受け止められない駿太の元から美穂は去っていった。

福原雅和は、武蔵野七十字病院で院長である父親と対立し閑職に追いやられる。

美穂は福原の診察を受け、適切な治療をすればHIVは死ぬ病気ではないことを知る。また大学時代の男友達と再会し、HIV治療を支えてもらう。

七十字病院を追い出された桐子修司は、神宮寺千香と小さな診療所を始める。HIV診断を受ける勇気がない駿太は、桐子診療所で診察を受けずに診断書を書いてもらおうとするが断られる。それでも桐子は駿太の意志を尊重し、無理に診察はしなかった。

やがて駿太の病状は悪化し、AIDSを発症し始める。憧れていたバーの店長にも冷たくあしらわれた彼は、世の中への復讐を企てようとする。ナイフを買い、風俗店でHIVウイルスを広めようと考えた。

  • とある母親の死

桐子は幼少期はアレルギー体質で頻繁に入院していた。同室となった絵梨と徐々に言葉を交わすようになる。

絵梨には桐子と同じ年頃のカズという息子がいた。絵梨がカズに「病気を治して遊園地に行くこと」を約束しているのを見て、桐子は「気休めは止めた方がいい」と言う。

壮絶なアレルギーとの戦いで「自分は欠陥品」だと思っていた桐子は、病気と闘うことを諦めていた。そんな桐子にたいし絵梨は、「諦めずに病気を治すことができるかどうかの賭け」を持ち掛ける。

  • とある医者の死

福原の父である欣一朗は認知症を患い、七十字病院院長の責務を果たせなくなる。

院長代行となった福原は、父への復讐のため、桐子を呼び寄せ治療を任せ、「できるだけ楽に、ぽっくり死なせてやってくれ」と頼む。

桐子は、記憶が混乱し過去と現在が入り乱れる欣一朗の話を聞き、患者自身の意図を汲み取ろうとする。 

感想・考察

「とあるチャラ男の死」で駿太が「会いたい人はいません」と告げたシーンはぐっと来た。最後にちゃんと大切なものを見つけられたのは幸せだったのだろう。

が、それ以上に「とある母親の死」は反則だ。遊園地に向かうシーンではダダ泣きしてしまった。「大切な人の死」にはどうしたって心を揺さぶられる。

生きることに疲れ絶望することがあるかもしれないけれど、自分のそばにいてくれる人の中に「希望」は隠れている、ということだ。

HIVにまつわる偏見を解消しようとする啓蒙的な部分もある。病気を恐れて治療を逃れてしまう気持ちも十分理解できるが、ちゃんと治療すれば発症を防ぐことはできるし、子供を産んで長生きすることもできる。治療費もせいぜい毎月数万円程度。知らなければ逃げてしまい、結果病気をばらまくことになるかもしれない。

医療小説は医療や医師の状況などを伝えることでも意義がある。

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