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京都寺町三条のホームズ : 1

京都寺町三条のホームズ : 1

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面白くて知恵がつく、人の死なないミステリ!

あらすじ

大宮から京都に引っ越してきて半年の女子高生 真城葵は、元カレが親友と付き合い始めたという噂を聞き、大宮に戻る交通費を得るため祖父の遺品を骨持ち出した。

京都三条寺町の骨董品店「蔵」で働く ホームズこと家頭清貴 は葵の真意を見抜き、「蔵」でアルバイトをして交通費を稼ぐことを提案した。

こうしてホームズと葵の物語が始まる。

第1章「願わくば桜の下にて」

「蔵」で働き始めた葵は、ホームズがある男から依頼された「京焼茶碗」を鑑定するのに同行する。その茶碗は男が父から残された遺品で、そこに残された「父の気持ちすべて」を解釈して欲しいと頼まれる。

第2章「葵の頃に」

京都三大祭りの一つ「葵祭」で主役となる「斎王代」に、老舗呉服店の娘 宮下佐織が選ばれた。

ところが佐織の元に「斎王代を辞退しろ」という脅迫状が届き、ホームズに調査を依頼される。ホームズと葵は佐織に嫉妬している華道教室の生徒に会いに行く。

第3章「百萬遍の願い」

ホームズの父 家頭武史 は、その父 家頭誠司に憧れ鑑定士を目指したが、「資質がない」ことを自覚する。今では誠司の店である『蔵』で働きながら、小説家を本職としていた。

第4章「鞍馬山荘遺品事件簿」

武史の友人である作家 梶原 が亡くなり、その息子である3人兄弟に残された遺品の鑑定を依頼された。ホームズと葵は梶原一家の住む鞍馬山の山荘に赴いたが、遺品の掛け軸は何者かに燃やされてしまったという。

第5章「祭りのあとに」

祇園祭を数日後に控えたころ、『蔵』にホームズの元カノが訪れ、他の男との結婚が決まったことを報告する。彼女は茶碗の鑑定を依頼しその結果を2日後に知りたいと言い残して去る。

同じころ、葵は大宮での高校の友達が修学旅行で京都に訪れるという連絡を受ける。葵は友達と会う約束をしたが、元カレや元カレを奪った親友と会う可能性に気持ちを沈ませていた。

感想・考察

人が死なないライトなミステリ、京都の町の雰囲気、古美術のウンチク、鋭い頭脳と上品さを兼ね備えたイケメンとの恋愛等々、、幅広い層に引っかかる「売れそうな本」だ。

作者は作中で「『これが売れる』というものを描いてもいい。そもそも自分の好きなようにだけ描くのはプロとは言えない。大事なのはそこに自分のブランド、魂を込めること。」と書いている。

本作は色々な要素を詰め込み、ある意味緩い感じにはなっているが、そこから醸し出される雰囲気は、望月麻衣さんにしか出せないものになっている。

また、作中でホームズは「素質がない」と古美術品鑑定を諦めた父を「甘い」と評している。「本気でなりたいものだったら、そう簡単に引き下がれない。百万遍唱えるほど努力をするなら必ず叶えられる」という。

作品はライトな雰囲気だが、ある意味ストイックな姿勢で臨んでいるのだろう。今後作品がどう成長していくのかが楽しみに感じられた。

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