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ハンター

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「不老不死」を手に入れた後、
人は何を望むのだろうか。 

あらすじ

第二次世界大戦終結間際、ドイツでは不老不死の研究が行われ、老化を促進させる遺伝子上のプログラムを書き換えるウイルスがほぼ完成していた。

その時の文献を見付けた医学教授の金城信吾は研究を進め、不老不死の薬を完成させた。どうしても妻の医療費が必要だった信吾は研究結果を大手製薬会社に売ろうとするが、その直後に不審な死を遂げてしまう。

共同研究者だった平松が信吾の娘 金城涼子を引き取り育てた。信吾が殺されたことを知った平松も製薬会社に接触するが、彼もまた殺されてしまう。

平松は死の直前、涼子に「20年後に読め」といって手紙を渡した。成長した涼子はその手紙を元に不老不死の薬を再開発し、自分自身を被験体とした。

 

平松の死から37年がたった今、涼子は父と平松を殺した相手をあぶりだすため「不老不死の薬が完成した」という情報を雑誌に公開した。雑誌社の記者で児童養護施設で一緒だった 間宮翔太に頼み反応を待つ。

「殺し屋」の鮫島竜二が暴力団から「不老不死の薬を完成させたという教授を殺せ」という仕事を受ける。竜二は雑誌記事を書いた翔太に接触し情報元を探ろうとするが、翔太は頑なに口を閉ざす。

幼いころ父から虐待を受け半身にケロイド状のやけど後を持つ翔太は、世の中に受け入れらない苦しさを感じ続け、常に死を意識していた。それでも世を恨むわけでもない翔太の不思議な強さに竜二は興味を持つ。そして翔太が守ろうとする涼子を共に守ることを提案する。

 

竜二は元刑事の長田に情報収集を依頼する。長田は現役刑事の西条を使い、金城と平松が殺された事件について探りを入れた。製薬会社だけではく大手マスコミや警察までも事件の隠蔽に奔走した跡があり、何らかの大きな力が働いていたことがわかる。

 

竜二、涼子、翔太の3人は大いなる敵との戦いに挑む。

 

感想・考察

自分が不老不死になったら何をするだろう。

 

本書で不老不死の力を手に入れた「ルーラー」たちは、技術の流出を防いで独占し、競争を強化し格差を拡大することで自分の立場を確保しようとした。

永遠の命を持てば、膨大な経験の蓄積と、いくらでも「待つ」ことできるというアドバンテージがあれば、ゲームは有利に進められるだろう。他者が台頭し自分の優位性を脅かすことを恐れるのも理解できる。

 

ただ、やっぱりそれは面白くない。

 

現実に人間の平均寿命も健康寿命も伸びている。不老不死とはいわないまでも100年超の時間を過ごす人は、これからさらに増えていくだろう。

経験の蓄積や時間の力で有利なポジションを築いた人が、人生後半に入って保身に走るのは、理解はできるが面白くない。中でも周囲を落として相対的な優位性を保とうというのは格好悪い。

 

年長世代であっても負けるリスクを取って挑戦するのが面白いと思う。

 

作者の如月さんは「エンジェル」でも「死という仕組みの不自然さ」をキーにしている。本書のように社会的テーマとしてみたり、SF的で壮大な展開としたり、切り口を変えているが、「死」や「不死」と向き合うことが中心的なテーマなのだろう。

 

もう少し他の作品も読んでみよう。

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