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ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

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要約

未来を作ることはできるか
人類の歴史の大半は「ゼロサム」だったが、テクノロジーが新たな富の源泉となり世界は豊かになった。
今の先進国の豊かさが世界中に広めることは環境が受け止め切れず、新たなテクノロジーのブレイクスルーが必要。
より平和で豊かな時代を作るためのテクノロジーを思い描き創り出すことが我々に与えられたチャレンジ。

バブルの後遺症
1990年代のネットバブルは「狂気」だった。

バブル崩壊後は、その反動として「大言壮語」を警戒し、計画するよりも「リーン・スタート」を切って細かく改善していくような起業が求められた。
筆者はこれに異議を唱え、
・小さな違いを追うより大胆に賭けた方がい
・出来が悪くても計画はあるべき
・競争の激しい市場では収益が消失する
・販売は製品と同じくらい大切
と述べる。

独占的資本主義
完全な競争下で長期的に利益を出せる企業は存在しない。独占するから利益を出せる。

他社を蹴落としたり、国から既得権を得るような独占は社会の利益を損なうが、「他社の代替が効かないほど、そのビジネスに優れた企業」が、独占的にビジネスを行うことは認められている。

iPhoneのデザイン、生産、マーケティングによってもたらされたAppleの独占的利益は、社会に潤沢さをもたらした見返りであり、人為的に作られた希少性から得られたものではない。

スコープの捉え方次第で「独占」の意味合いも変わってくる。

Googleは「米国内のネット広告市場」では高いシェアを持つが、米国内の広告全般、世界の広告全般、もしくはハードウェアも含めた企業と考えると市場シェアはごくわずかになる。

実際に高シェアを持つ企業は「目を付けられないよう」に大きな市場を見て自らのシェアを低く見積もるし、小規模の企業では実績を誇示するため限定的な市場でのシェアをみせる傾向がある。

独占企業の特徴
「このビジネスは10年後も存続しているか」と問い、遠い未来に大きなキャッシュフローを生み出すか考える。

以下の要素を揃え、独占状況を築くことが必要。
・プロプライエタリ テクノロジー
  10倍は優れた固有技術。
・ネットワーク効果
  小規模ネットワークからバイラルな拡大が有利。
・規模の経済
  ソフトウェアでは規模の経済の影響が大きい。
・ブランド
  広告宣伝も重要。ただ本質が先。

未来をコントロールできるか
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは「運が半分、タイミングが半分、残りが頭脳」と言ったが、連続起業家(シリアル・アントレプレナー)の存在は運だけではないことを示している。

1960年代までの米国は「明確な楽観主義」で進むべき道を認識し、楽観的に取り組んでいた。1980年以降の米国は「あいまいな楽観主義」で未来は良くなると信じつつ具体的にデザインはしない。

著者は「あいまいな楽観主義」は成立せず、デザインを復活させる必要があると説く。

べき乗則
「2-8の法則」にあるように、少数の上位が大半の成果を出す傾向にあるがスタートアップではその偏りが顕著。
数千の投資案件の上位1件だけで他全部の合計を超える成果を出すこともある。

「大成功、そこそこ成功、失敗」は正規分布しない。分散投資ではなく「大化けする可能性」にかけるべき。

隠れた真実の見つけ方

「既に広まっている定説」と、「解くことが不可能な謎」の間に「難しいが解くことができる」 隠された真実がある。

既にフロンティアはなくなったという考え方や、漸進主義、リスク回避、現状の満足、フラット化の影響で隠された真実を追求する探究心はなくなってきているが、そこにこそ飛躍の鍵がある。

営業の重要性
良い製品があれば顧客は勝手にやってくるわけではない。「どう売り込むか」を軽視してはいけない。

人間と機械
コンピュータは人間の仕事を奪わない。低賃金で働く移民が職業を奪うことはあるが、それは「同じ人間」であり、生活レベルが良くなれば「もっと上」を目指す欲があるからだ。
コンピュータは人間と得意分野が異なるし欲がない。人間とコンピュータの関係は補完的であって代替するものではない。
いまのところは。

成功するスタートアップの条件
・エンジニアリング
 段階的な改善でなくブレイクスルーとなる技術があるか。
・タイミング
 ビジネスを始めるのに最適なタイミングか。
・独占
 大きなシェアが取れる小さな市場から始めているか。
・人材
 正しいチーム作りができているか。
・販売
 製品を届ける方法があるか。
・永続性
 この先数十年生き残れるポジショニングか。
・隠れた真実
 他社が気付いていない独自のチャンスを見つけているか。

テスラの例を見ると
・エンジニアリング
 部品の組み合わせでまとめ上げる能力。
・タイミング
 政府補助の終息間際に駆け込んだ。
・独占
 電気スポーツカーというニッチ市場から始めた。
・人材
 イーロン・マスクのカリスマと優秀なチーム。
・販売
 自社販売網を持つことへのこだわり。
・永続性
 スタートダッシュでの他社との差が大きく当面追いつかれない。
・隠れた真実
 「環境への配慮」も「クールさ」の一側面だったという真実。

シンギュラリティ
未来には4つのパターンがあるとみる。
・発展と衰退の繰り返し
・ ある程度進歩したのちはプラトーで安定
・ある時点で滅亡
・指数関数的な急拡大(シンギュラリティ)

滅亡か進歩かは自分たち次第。
シンギュラリティの達成よりも目の前でチャンスをつかめるかが現実的な問題だとする。

感想・考察

人間の能力に対する信頼感がある。

「未来は自分たちが作っていく」「環境は人間がコントロールできる」という思い。世界を変えていく人には「世界は変えられる」という信念があるのだろう。

同調圧力に負けず、コントロール感を維持して「隠された真実」だと信じられるものを探し追求していく強さがなければ、彼らとの戦いで伍していくことはできなのだろう。

「隠された真実」を探してみたいと思う

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