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イラストで読むAI入門

AIに仕事を奪って欲しい、でも収入は奪うな!『イラストで読むAI入門』 

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要約

  • AIの歴史

AI(Artificial Intelligence) というネーミングは、1956年のダートマス会議で生まれた。

この時期に第一次AIブームが起こるが「パーセプトロン」と呼ばれたAIには「排他的論理和」を認識できないという致命的欠陥があった。これは Yes / No の区別を直線的にしかできないということで、実用に至らなかった。

1980年代には第二次AIブームが起こった。「パーセプトロン」の欠陥を「バック・プロパゲーション」で克服したことが契機となった。「バック・プロパゲーション」とは入力に対する実際の出力と望ましい出力の誤差を返すことにより、中間層での処理を訂正していく機械学習の手法。

ただ、この時期のAIは実用的な精度に至らず、袋小路に入ったように衰退していった。

2012年にディープラーニングが登場したことで飛躍的に進歩し、第三次ブームが起こった。ネットワークを多層に重ねたことで飛躍的に制度を上げた。

またこの時期にはコンピュータの性能が上がっていたことと、インターネットの拡大により学習素材となるデータが大量にあったことから急成長し、Googleなどの企業も積極的な投資をしている。

第2次AIブームの時期に生まれた、別系統のAIであるエキスパートシステムは「if ~ then」のルールを大量に教え込むことで、例えば病気の診断などに使える。しかし全てのルールを人間が教え込む必要があるため、人間の作業量は減らないし、ルールが矛盾した場合の整合性などでも調整が必要になってくる。ただこの弱点は論文を読んだりインターネットの情報を自分で撮りに行く仕組みができたことで徐々に解消され、実用的なAIとなっている。

一方でディープラーニングは画像認識などのパターン認識を得意としており、MRIなどの画像から病巣を発見する精度は人間を上回っている。

エキスパートシステムとディープラーニングによるAIは、どちらも人間のアシスタントになり得るレベルに至っている。

レイ・カーツワイルは、AIが人間の超えに減の理解が及ばないことを自分で判断するようになる「シンギュラリティー」が2045年頃に来ると予測しているが、AI研究者の大半は「AIはそこまで賢くはなれない」とみている。

ただ、たとえば囲碁などの一部分野ではすでに「シンギュラリティー」は起こっており、AIが打った人間には理解できない手を、後からトップ棋士たちが集まり数か月かけて検証しようやく理解されるような状況になっている。

とはいえAIが人間を超えても囲碁が衰退することはなく、逆に囲碁の可能性がさらに広がっている。「AIが人間の職を奪い、人間を支配する」というような悲観は必要ない。

初期の囲碁AIは過去の棋譜を大量に読み込むことでパターンを覚えていたが、「アルファ碁ゼロ」では棋譜を読まず、自ら試行錯誤の中で学習していく「教師無し学習」のスタイルを取っており「教師あり学習」よりも高い成果を出している。

  • AIは万能じゃない

AIには特定の目的に使われる「特化型AI」と 、多様な作業をする「汎用型AI」があるが、人間の様な汎用性の高さはAIにとって極めて難易度が高い。

人間が無意識に判断している閾値をAIに持たせることも難しく、想定されるすべての問題を考慮して動きが取れなくなる「フレーム問題」も存在している。

人間であれば「ぼんやり」「うっかり」の中から閃きを得たりするが、現在のAIはまだその領域には達していない。

あいまいな部分の多い、自然言語処理もAIには難易度が高い処理だ。

現在のAIは既に「教師無し学習モデル」を実現している。人間の常識に捉われない分、常識を超えられる可能性があり、実際に囲碁などでそういう例が生まれている。

パターン認識の能力も人間を上回っている。MRI画像からの病巣発見などは人間よりも圧倒的に精度が高い。

小説などの文章はAIにとっては難しいが、音楽や絵画などパターンを認識し、「バッハ風の音楽」や「レンブラント風の絵」を描くことは十分にできる。

ただトップクリエイターが「何故その絵を描いたのか」「何故その音楽を作ったのか」という論理的な説明ができない感性の部分ではまだ追いついていない。

  • 「おはよう」から「おやすみ」までのAI

汎用型のロボットは 人間に近づいていゆく。人間の道具をそのまま使い、人間向けの作業スペースを共有する。大きすぎると威圧感があり、硬すぎると怪我をさせてしまう。人間と同じ程度の大きさで、柔らかく、人間と同じような手を持つロボットになるだろう。

初期のAI搭載ロボットは、センサーから集めた情報を集め判断する中央集権型、トップダウン型だった。しかし掃除ロボットの「ルンバ」などで各ユニットが個別に判断し問題が起こったときだけ上位の判断を仰ぐというボトムアップ型ロボットも生まれてきている。

家電製品が普及し、家事労働が楽になっても人は暇にならなかったように、AIが普及しロボットが導入されても、人間はやることを探し更に忙しくなるだろう。

感想・考察

難しい内容は一切なく読みやすい入門書。

技術的な話などはほとんどなく、AIの歴史や可能性について初歩的な内容が理解できるようになっている。

著者は「AIが人間の職を奪う」、「AIが人間を支配してしまう」というような心配は現実的ではなく、今後人間の生活をより豊かにしてゆく助けになるものとして期待を持って見ている。

AIが仕事を奪って働かなくても暮らしていけるなら、個人的にはそれも悪くないと思うけど。お金の配分とか社会との関りとかが上手くいくのであれば、楽しいと感じることをしていきたいなあと思う。

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