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君が電話をかけていた場所

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あらすじ

深町陽介は、顔の痣強いコンプレックスを持っていた。ケンカの絶えない素行の悪い学生で、周囲と壁を築いていた。

陽介が中学の卒業式から帰る途中、公衆電話のベルが鳴っていた。受話器を取ると女性の声で唐突に「一つ提案があります。あなたには諦めきれない恋があるはずだ。」と言われる。話に取り合わず受話器を置いていったが、その直後に工事現場での事故に巻き込まれ両足を複雑骨折してしまった。

陽介は謎の女性が電話で言った「諦められない恋」という言葉から、小学生のころに自分の痣を気にせず親しくしてくれた 初鹿野唯 のことを思い出していた。

3ヶ月後、退院した陽介は海辺の公衆電話で謎の女性から賭けを申し込まれる。「痣があるから愛される資格がないと思っているなら、痣を消す。それで8月末までに唯の心を射止めることができればあなたの勝ち。できなければ私の勝ち」だという。

他の生徒から3か月遅れて初登校する日、陽介は自分の顔から痣が消えていることに気づいた。コンプレックスが消えた陽介はうまく学校に溶け込んでいった。隣の席になった荻上千草からは積極的な好意を寄せられる。

その日の放課後、陽介は学校の裏の公園で自殺をしようとする少女を発見し、何とか食い止めた。その少女は少女は唯で、彼女の顔には小学校時代にはなかった大きな痣があった。唯は陽介を押しのけ去っていってしまった。

その後陽介は、実は唯が同じクラスで、陽介と会いたくないという理由で不登校になっていたのだと知らされる。陽介には唯に避けられる理由が分からず、また彼女の顔にできた痣と、自分の顔から消えた痣の関係も分からなかった。陽介は唯の家を訪れるが、冷たくあしらわれてしまう。

それでもしつこく唯の家に訪問していた陽介は、彼女の姉から唯が毎夜遅くにどこかに行っていることを聞き出す。深夜まで待ち伏せた陽介は、唯が廃墟となった旅館の屋上で星を眺めていることを知る。

陽介は、唯と同じ中学出身の千草から唯の中学時代の話を聞く。唯の痣は中学2年のころからでき始めたが、当初は周囲との関係はそれほど変化していなかった。ところが翌年3年生の夏休み直前に4日間学校を休んだ後、急に彼女は変わってしまったという。

感想・考察

肉体的コンプレックスに逃避し依存していた少年の成長物語であり、人魚伝説に重ねた悲恋の物語でもある。

なお、この本だけでは完結していない。「僕が電話をかけていた場所」が本作の後編になる。

千草が「私の自由を祈ってほしい」と言ったとき、何の束縛から逃れたかったのか。「ミスみなぎさ」になって当惑したり、前編だけでは分からない伏線が後編で見事に回収される。急いで後編へ行こう!

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