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Fと成りうる者

呪いの連鎖が恐ろしい。『Fと成り得る者』

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あらすじ-ネタバレ

「なあ、こんな都市伝説があるのを知っているか?」

高校生の日比谷は友人のDから「町はずれの祠跡地にある石に触れると死んでしまう」という都市伝説を聞かされた。

Dは好奇心からその石に触ってみたという。「何も起きなかった」とDは言ったが、痛めていた肘を気にしなくなったり、授業中の様子がおかしかったり、日比谷は違和感を感じていた。

日比谷は都市伝説の起源を調べた。

かつて第二次世界大戦の末期にこの町にも空襲があり防空壕が作られ、中に閉じ込められた人はすべてが死してしまったという。都市伝説になっている祠の石は、その防空壕を祀ったものだった。都市開発で祠の取り壊しが行われようとしたとき、工事会社の社長が急死し、作業員の間にも病気や事故が続いたことが、都市伝説の始まりだったという。

また、最近町で起きた3件の自殺に、共通する特徴がみられたというネット記事も見付けた。A、B、Cの3人は風呂場で手首を切り、口に自分の血を含んでいたという。Aは祠を取り壊そうとした建設会社の従業員、BはAの知人の息子の高校生、CはBの知人の高校生だった。

自殺したCというのが、Dの知り合いで会ったことが分かり、Dが呪いの連鎖に巻き込まれたことを知った日比谷は、翌日にお祓いに行くことを決め家に戻った。しかし、夜になってDに連絡しても返信がないことをいぶかしんだ日比谷は、Dの家に向かう。そこで日比谷は追い詰められたDに襲い掛かられるが、何とか難を逃れ逃げ切った。

後日、日比谷は絶対に避けようと思っていた防空壕の祠に足を運び、意志に反して石に触れてしまう。そして日比谷は何者かに操られるように次の依代を求めて、都市伝説を広げていく。

「なあ、こんな都市伝説があるのを知っているか?」

感想・考察

「リング」的な呪いの連鎖が怖い話だ。

呪いの連鎖が怖いのは、ビデオテープだったり、都市伝説だったりという、コミュニケーションの手段が呪いを媒介していることが要因だと思う。

人は本能的に他者とのコミュニケーションを求める。社会的な生物で他者と繋がることが生存戦略の根幹だからだ。だからこそ、生存戦略の根幹に関わるチャネルである「コミュニケーション」を利用した脅威に恐れを感じるのだろう。

昨今、コロナの影響で「人と繋がること」がリスク要因となり、コミュニケーションが制限されている。このことにストレスを感じている人も多いだろう。

疫病に感じる恐ろしさはまさに「生存戦略の根幹の根幹であるコミュニケーションを利用した脅威」に対する恐れなのだと思う。

そういえば「リング」原作でも、結核か何かの疫病が呪いの源泉だったはずだ。

恐怖という感情に刺さってしまうと、理屈はどうしても置き去りにされてしまう。

自分は何を怖れているのか恐怖の本質を見ることが大切なのだと思う。

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