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スターティング・オーヴァー

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あらすじ

「僕」は20歳の記憶を持ったまま10歳に戻った。

大好きな恋人がいて、素晴らしい友人に囲まれ、優秀な大学に入り、家族関係も良好。それまでの人生に100%満足していた僕は、完全に同じ人生をもう一度再現しようとしていた。
だが、わずかな違いが影響を広げるのか、いつのまにか1週目の華やかな人生から大きく外れてしまった。

最初の大きな食い違いは、恋人になるはずの相手だったツグミに告白したが振られてしまったことだった。それから徐々に消極的になり、クラスでもいじめられ成績も急降下した。

1週目より数ランク下の高校に入ったが、そこでも周囲と打ち解けることができず孤立していた。クラス内で自分と同じように孤立している女子ヒイラギを見て「自分より下がいる」と安心する毎日だった。

偶然ツグミを見かけたことをきっかけに、彼女と同じ大学に入るため猛勉強を始める。僕にとっては孤独を忘れられる勉強は苦ではなかった。

何とか、1週目と同じ大学に入ることに成功し、ツグミもその大学にいることが分かったが、彼女は「1週目の自分とそっくりな男 トキワ」と付き合っていた。

無力感にさいなまれた僕は、そのうち大学にも通わなくなる。
そして、ツグミを取り戻すため、自分のドッペルゲンガーであるトキワを殺害する計画を立てる。
自分の犯行であるとバレないような、またできるだけ罪悪感が小さくなるような殺害のため、トキワを尾行して生活パターンをつかもうとした。

ちょうどその頃、家出した妹が僕のアパートにやってきた。
1週目では誰からも人気があり、兄妹関係も良好だったが、2週目では妹も変わってしまい、内向的で友達もおらず兄に対しても冷淡な態度だった。
それでも、関係が悪化した両親と一緒にいることに耐えられず、僕の元で時間を過ごしていた。

妹と一緒に図書館に行ったとき、そこで僕はツグミと会った。何気なく本についての話をして、彼女への思いがまた強くなった。

いままで何度かトキワを殺すチャンスがあっても、踏み切れなかったが今度こそは殺す覚悟で彼を尾行した。
ところがトキワはずっと前から僕が尾行していることに気づいていた。そして「幸せが当たり前すぎて、幸福を実感することができなくなっていた。君が悪意を持って尾行をしていることに気づき、生の実感を取り戻すことができた」と感謝されていまう。

打ちひしがれた僕は、死を意識するが自殺することもできなかった。
考え込んでしまうことから逃れるためバイトを入れまくり、クリスマスにはデパートでサンタに扮して働いていた。そこでは偶然ヒイラギもサンタ役でバイトしていた。ツグミとトキワが二人の働くデパートに訪れ、ヒイラギと僕は姿を隠してしまう。

そしてその時、僕が今まで大きな勘違いをしていたことに気づく。

感想・考察

10年前に戻されたとして「全く同じことを繰り返したい」と思えるなら、それは幸せな10年間だったと言えるのだろうか。

この本の主人公である「僕」は、同じことを繰り返そうとしながら、小さな違いが拡大して「幸せな人生」が「最低な人生」になってしまった。

小さなきっかけが人生を変え得るというのは「今の幸せがいつ失われるか分からない」という怖さにつながる。でも逆に見れば「どのような状況からでも人生は変えることができる」ということでもある。

誠実さを失わず、どん底でも投げ出してしまわなければ、人生には逆転のチャンスが満ちているのだ。

この本を読むときは、ぜひジョン・レノンの Starting Over を聴きながら。

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