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緋色の研究

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あらすじ

ロンドンで下宿を探していた元軍医のジョン・ワトソンが、友人の紹介でシャーロック・ホームズと同居を始める。ホームズは犯罪捜査に特化した知識と技術を持ち、探偵コンサルタントとして事件の解決を請け負っていた。

ある日、ホームズの元に警察から事件調査の依頼が入る。
空き家でアメリカ人旅行者のドレバーが殺されていた。現場には血痕があったが、被害者には外傷はない。壁には血文字で「RACHE」と書かれていたが、ドイツ語の「恨み」を意味するのか、Rachelなどの名前の書きかけなのか判断ができなかった。また、死体のそばには金色の結婚指輪が落ちていた。

ホームズはその状況を見ただけで「これは他殺、犯人は壮年の男子で身長6フィート以上、ここには被害者と一緒に馬車でやって来た。十中八九は赤ら顔」と、犯人の特徴を断定する。

ホームズは、現場で拾った指輪を犯人が捜していると考え、拾得物のお知らせを新聞広告に載せた。指輪を受け取りに来た老婆を追跡するが、馬車から忽然と姿を消してしまった。

警察はドレバーの秘書であるスタンスガンに容疑をかけ追っていたが、彼もまたホテルの一室で殺害されているのが発見される。
スタンスガンの殺害現場に毒の含まれた丸薬が見つかったことで、ホームズは謎を解くピースは全部そろったと言い、事件は解決へと向かう。

続いて、これら2件の殺人の動機となったアメリカでの出来事が語られる。
原野で迷い行き倒れ寸前だった父娘がモルモン教徒の集団に救われ、その後ソルトレークに定住して地位を築いた。だがモルモン教の一夫多妻の教義に納得できない父は娘を他宗派の男に嫁がせようとする。教えに反旗を翻した父娘は、教団に追い詰められていく。

感想・考察

100年以上前の作品とは思えないほど、色あせない鮮やかな面白さだ。

風変わりな探偵を常識人の視点から驚きを込めて描写したり、推理の仮定を省略して結果だけを伝えて相手を驚かしたり、現代のミステリでも現役で活躍するフォーマットを、すでに完成させていたのは凄いと思う。

第二部で、延々と過去のストーリーが語られるのには、ちょっと違和感もあった。最近のミステリで動機部分は比較的軽く流されている部分だからだろう。
最近ではむしろ「犯罪に感情移入させない」ために「建築物が左右対称じゃない」とか「ハンガーを投げつけられた」とか、1㎜も納得できない動機にしてるくらいだ。
また、今だとコンプライアンス的にきつそうだが、「宗教団体の実名を挙げて批判」したり、「飼い犬に食べさせて毒薬を確認」しちゃうとか、空気を読まない自由さもある意味新鮮だ。

行儀良くまとまらないパワーが、シャーロック・ホームズシリーズを後世に残る傑作に押し上げたのだろう。

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