BookLetでは、ビジネス書や小説の1000文字程度のオリジナルレビューを掲載しています。

掟上今日子の婚姻届

こちらで購入可能

あらすじ

一日ごとに記憶がリセットされてしまう「忘却探偵」の掟上今日子シリーズ第6弾。今回は被冤罪体質の隠館厄介が語り手となる。

ある日、隠館は掟上の講演会に参加する。そこで最後に質問した女性の言葉が頭に残っていた。それは「私は同じような男の人ばかり好きになって毎回失敗してしまう。これは記憶のせいなのか。掟上さんは記憶がリセットされると違う人を好きになるのか」という質問だった。

その一カ月ほど後に隠館は「冤罪体質」についての取材を受けることになる。訪れた記者 囲井都市子は、掟上の講演会の最後に質問をした女性だった。

取材の後、囲井は隠館を食事に誘い自分の恋愛遍歴を打ち明ける。幼稚園の頃から始まって、自分が好きになった人、付き合った相手の6人がことごとく「破滅」しているという話だった。そして囲井は破滅に負けない隠館にプロポーズをしてしまう。

隠館は囲井の「身辺調査」を掟上に依頼する。数時間の調査で囲井の相手で本当に破滅したと言えるのは小学生時代にいじめられて自殺した少年と、社会人になって最初の会社で自主退社に追い込まれた男性の2名だけで、他の4名は現在順調に過ごしていること、破滅したと言える2件についても、囲井が原因ではないことが明らかになった。

隠館は囲井に調査結果を伝えたが、彼女は「そんな理由でプロポーズを断ろうとしたこと」に激高し、隠館を「破滅させる」と脅してきた。

その夜 掟上は、眠りに落ち記憶を失う直前にある事実に思い当たり、深夜にもかかわらず隠館の家を訪れてきた。
掟上は 翌日に記憶を残す「ズル」をして真相を探っていく。

感想・考察

掟上今日子の「計算され尽くしたあざとさ」は素晴らしいが、本作では語り手の隠館厄介の方もやたらとカッコいい。

特に「冤罪体質」について取材を受けていたシーンでは感情移入してしまう台詞がたくさんあった。

例えば「被害者が加害者になるパターン」を「とてもじゃないが、痛快とは言えない。痛々しさだけが残り、不快でさえある。社会がずっとそんなことを繰り返してきたのだと思うと、悲劇を通り越して、もはや喜劇と言うべき」だと述べている。「忠臣蔵」的な敵討ちの美学は1ミリも理解できなかった自分には、隠館の見方の方がずっとしっくりくる。

また「濡れ衣を着せた相手を恨まないのはなぜか」という問いに「立場が変われば自分も同じことをするのだから恨む気持ちにはならない」と答え、「人間がいかに疑いやすい生きものなのかを自覚して、少なくとも自分は根拠もなく人を非難しないように心がける」と言った。

まあヘタレなのだが「ヘタレを貫き通すことの強さ」が、囲井も、超絶嘘つきの掟上も救っている。
カッコいいと思う。

こちらで購入可能