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勝手にふるえてろ

勝手にふるえてろ

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あらすじ

経理部で働く26歳のOL ヨシカ は、中学生の頃から片思いを続けていた相手 イチ が忘れられない。
中学時代にも直接話したことはほとんどなかったが、直接視線を向けず視野の端で相手を捉える「視野見」の技術を駆使したり、イチを主人公にした漫画を描いたりして想いを内面に熟成させていた。

ヨシカは同じ会社に勤める同期の ニ から告白されるが、自分から愛する人以外との関係に踏み切れず、告白への答えを保留し続ける。

イチともう一度会いたいとおもったヨシカは、海外留学中の同級生の名を使って中学時代の同窓会を呼び掛けた。イチとの再会を果たすが「イチは自分を愛してはいない」ことを認識し「フラれた」と感じる。

その後、ヨシカは ニ との関係を深めようとするが、ヨシカの友人がニに「ヨシカは結婚願望が強い、ヨシカは男性と付き合ったことがなく処女だ」と吹き込んでいたことを知りショックを受ける。
ヨシカは動揺のあまりニ に「私は中学時代から好きな人がいるから付き合えない」と言い、会社には「妊娠した」と偽りの申告をして長期休業を取ろうとした。

自宅に引きこもるヨシカは再び ニ に連絡を入れる。

感想・考察

妄想が暴走する「こじらせ女子」感とか、興味ない相手への容赦ない(脳内)暴言とか、コミカル要素が前面にでて軽く楽しく読める。

でも「自分が愛する相手」と「自分を愛してくれる相手」の間で揺れ動く思いはシビアに表現されている。

イチと再会したヨシカは「私はイチが大好きだと痛烈に感じた日、五感の膜が一枚剥がれたように世界が違って見えた。私から告白して無理に付き合ったとしても、イチに『人を好きになるときの気持ち』を味合わせることはできない」と考え、片思いを断ち切った。
10年以上イチを想いながら、本当に見ていたのはヨシカ自身の心だけで、この時初めて イチ の心と向かい合ったということだろう。


そして最後にヨシカは「自分の愛ではなく他人の愛を信じるのは、自分への裏切りではなく、挑戦だ」と言い切り、今までと違う愛の形を受け入れることをニに宣言する。

振り回される ニ は大変そうだけれど、幸せなんだろうなと思う。

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