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【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!

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要約

長大なピケティの『21世紀の資本』のポイントを、書籍内で使われている21のデータ図表を使い説明していく。

1.産業革命以降、欧米の生産力がアジア・アフリカを圧倒していたが、アジアの追い上げで地域格差は縮まりつつある。

1700年代以降、欧米は人口比率では20%~30%程度だったが、世界算出の分配を見ると1950年代には70%を占めるほど成長した。だがその後アジアの追い上げで50%程度まで落ち込んできている。

2.古代から人口増加が続いたが、20世紀半ばからアフリカ大陸を除き人口減少期に入った。21世紀末には人口増加率0%になると予測されている。

社会の近代化にともない「多産多死」→「多産少死」→「少生少死」と移行することで、人口増加率はゼロに近づいていく。

3.一人当たりGDPは19世紀半ばから増加したがピークは過ぎ、21世紀末には1%程度まで下がる。世界のGDP成長率は1.5%前後になる。

1800年代までは、一人当たりGDPの増加は緩やかでゼロに近かったが産業革命以降急伸し現在では2%程度となっている。2050年までは今後欧米諸国では1%程度、新興国で4%~5%で推移すると予測され、21世紀末には1%程度に落ち着くとみている。それでも産業革命前の水準には戻らない。
人口増加率を加味して世界全体のGDP増加率は1.5%と低値で安定する。
→経済成長がなければ、経済格差を埋めることはできない。

4.20世紀初頭の2つの世界大戦に際し、欧米では最大17%のインフレが起きた。1990年以降はおおむね2%前後のインフレ率。

戦争を機に金本位制は世界的に失われ貨幣の価値が落ち、最大17%まで上がった。徐々に下落を続け2%程度に落ち着いているが、2%~4%の範囲で推移すると考えられる。
国債などの公的負債が増えている場合、インフレ誘導も有効な手段。

5.ヨーロッパ・アメリカで民間資本は二回の世界大戦で減少したが、1970年代以降増加している。

特にヨーロッパでは戦後に資産家の財力が低下した。もともと貯蓄率は低く、戦争で僅かな貯蓄も戦費に回された。政治意図的に資産家の力を削ぐ諸政策もあった。アメリカでは戦争の影響はそれほど大きくなかったが、やはり低下した。
1970年代以降は、諸企業の民営化に伴い公共資本が民間資本に移行し、資産価値も上がったため、民間資本の比率が公共資本の500%まで増加してきている。
21世紀末には700%近くになると予測している。
また、新興国の追い上げで21世紀末までにはアジアが世界民間資本の過半を持つと予測されている。

6.1975年以降、富裕国では国民所得のうち資本所得の比率が上昇している。

「資本所得」は労働で得る所得ではなく、資産の運用で得る所得。1975年には15%~23%程度だった主な富裕国での資本所得の比率が2010年には25%~30%程度に上昇している。


7.20世紀後半からアングロサクソン諸国で所得格差が拡大している。

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアといったアングロサクソン系の国で所得格差が拡大している。
世界大戦前にはトップ1%の富裕層が18%~22%の富を占有していたが、戦後低下を続け1970年代には10%以下となった。ところが1980年代以降反転し、10%~16%まで上昇してきている。
これは「資本所得」の増加だけでなく、桁違いの超高給を取る「スーパー経営者」の台頭も影響している。

ヨーロッパや日本などそのほかの富裕国では戦後10%以下に下がってから安定を続けているが、2010年以降に少しずつ上昇の兆しが見えている。

また、アジアや南米などの新興国でもアングロサクソン諸国と同様の所得格差がみられる。

8.資本収益率はGDP成長率より大きい。この状況は今後も続き、格差は拡大していく。

ピケティは歴史的事実として「資本収益率 r は、成長率 g より大きい ” r > g” という不等式が常に成り立つと主張する」

これは「働いて稼いでも、資本を持っている人が運用するのには敵わない」ということで、格差が拡大していく要因である。

産業革命前の伝統農耕社会では「資本=土地からの収益」で少なく見積もっても4~5%、それに対して成長率は0.1%程度だったため、r>g が間違いなく成り立つ。世界大戦で例外的に r>g の不等式が成り立たなくなったが、また復活してきている。

9.所得税の累進課税率は戦時などに引き上げられた。アメリカ・イギリスで変動が大きく、一時的に大きく引き上げ、すぐに引き下げられている。相続税の累進課税率も同じような動きを取っている。

ピケティは格差是正のためには「累進課税を強める」ことを主張している。また、国ごとの税率に差があれば、課税率の低い「タックスヘイブン」に資本が資本が流失してしまうため、国際協調が不可欠だともしている。

感想・考察

「21世紀の資本」は分厚くて手が出せないでいたが、いくつかの解説書を読むと言いたいことはシンプルだ。

資本収益率は成長率よりも大きい。つまり頑張って働いても、お金を持っている人が運用して得る利益にかなわない。

から、放っておけば「格差は拡大し続ける」

その是正のために
・累進課税を強化しよう
・所得だけでなく資本に課税しよう
・低税率の国に逃げないよう国際協調しよう

ということだろう。

それらを、演繹ではなく帰納で、例証を多く挙げることで理論を補強している。だからあんなに分厚いデータだらけの本になったということだ。

富が集中して貧富の格差が広がれば経済全体が縮小する。これは貧しい人だけでなく富裕な人にとっても好ましいものではないだろう。
放っておけば富める者にさらに富が集中してしまうから、制限する仕組みを作ろうと考えるのも理解できる。

ただ「貧乏人のひがみ」的なやり方に見えてしまっては、世界を動かすことはできない。力を持つ人を強制力で抑え込もうとする戦いは難しいものだ。
ピケティがあげる「格差是正の成功例」も、戦争や恐慌など血を伴うものだった。

「富める者」に感情移入するのは極めて難易度は高いが、彼らも、持っているものを失うことを怖れているのだろう。多分、きっと。
「格差がある程度に納まったバランスの良い状態が、誰にとってもメリットがある」ことを示し、特に現時点で豊かな人にとって安心感がある施策が必要だ。

頑張って分厚い「21世紀の資本」も読んでみようか。。



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