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アリス・ザ・ワンダーキラー~少女探偵殺人事件~

アリス・ザ・ワンダーキラー~少女探偵殺人事件~

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あらすじ

アリスは父のような「名探偵」になりたいと思っていたが、母は「アリスには探偵の才能はない」と言い、自分のように「もっと固い仕事」に就くよう勧めていた。

10歳の誕生日、アリスは父から贈られた「極上の謎」に取り組む。『不思議の国のアリス』を模したVR空間に入り込み、24時間以内に謎を解けるかという挑戦だった。

第一問 SOLVE ME
目覚めたアリスはだだっ広い部屋に閉じ込められていた。
白うさぎが現れ、この部屋から脱出することが第一問目だと言う。

①この部屋のドアは鍵がかかっており出ることができない。
②部屋に置かれたガラステーブルには「体を大きくするクッキー」と「体を縮めるシロップ」があり、白うさぎに頼めば何度でも補充してもらえる。
③隣室のテーブルに、こちらの部屋のドアを開く鍵が置かれている。
⑤隣室には小さなトンネルを通っていくことができるが、そのトンネルを通ると「体を縮めるシロップ」は乾燥してしまう。

身体を小さくして隣室に行き、クッキーを食べてテーブルから鍵を取ることはできるが、シロップを運べないため戻ってくることができない。

アリスは試行錯誤の末、正解の一つに辿り着いた。

第二問 ハム爵夫人
次の謎を求めてアリスと白うさぎは公爵夫人の屋敷に向かう。
公爵夫人は子どもの死を受け止められず、ブタの赤ちゃんを自分の子どもだと言ってアリスたちに見せてきた。

公爵夫人の屋敷を出たアリスたちが歩いていると、大きなブタのファッティが「子ブタがいなくなった」と戸惑っていた。公爵夫人の子どもとして育てられているブタの双子の兄弟である子ブタが消えたのだという。
ファッティの子ブタを探していると、公爵夫人の赤ちゃんに扮していたブタも消えたという。

二匹の消えた子ブタを探すことが第二問だった。

第三問 カラスと書き物机はなぜに似ているか
「ハートの女王」は、自分が全知全能であるために分からない謎をすべて抹殺しようとしている。ミステリやパズルなどは次々と燃やされていた。

そんな中、帽子屋が店の奥の隠し部屋で謎解き愛好会を開催していた。アリスは三月うさぎの案内でこの会合に参加する。
帽子屋が出したのは「カラス(raven)と書き物机(writing desk)が似ているのはなぜか」という問題だった。参加者の誰にも解けずその日は散会する。

その後、再び帽子屋に戻った帽子屋が殺されているのを発見した。
そこには RAVEN と DESK というダイイングメッセージが残されていた。

第三問はダイイングメッセージの謎解きだった。

第四問 卵が先か
子どもに恵まれないハートの女王は、子宝の象徴である卵のハンプティダンプティを国で一番高い場所である壁に置いて験を担いでいた。
ところがトランプ兵が見守る中ハンプティダンプティは姿を消してしまう。
トランプ兵たちが見に行くと、ハンプティダンプティは壁から落ち割れてしまっていた。

ハンプティダンプティ落下事故の真相を探るのが、謎解き第四問だった。

第五問 Hurt the Heart
ハンプティダンプティを守れなかったトランプ兵が裁判にかけられることとなった。アリスも一緒に裁判所のある「ハートの城」に向かった。

城に辿り着いたアリスに白うさぎは「制限時間内に僕を捕まえることが5つ目の問題だ」と言った。

アリスはハートの女王に気に入られ養子としてガラス張りの幽離監護(ゆりかご)に閉じ込められてしまう。制限時間内に脱出することはできるのか。

感想・考察

『不思議の国のアリス』を模したVR世界というファンタジーな舞台だが、ミステリとしてはファンタジー的なごまかしは一切なく、論理的に積み上げられている。

一問目の脱出ゲームに別解のあることが示されていて、それを追求していくと最後の謎に辿り着くという仕掛けも面白い。「すべての謎に共通する要素」見出すメタ的な問いかけも、ミステリ心をくすぐってくる。

最後には「親子の確執を乗り越える」的なメッセージがあるのかと思いきや、いつも通り「バカミス」として落としてくる。

寓話に教訓を求めることを嘲笑うルイス・キャロルのように、ミステリのメッセージ性をおちょくるブレない姿勢がいい。

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