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吉田松陰「人を動かす天才」の言葉―――志を立てることから、すべては始まる

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要約

長州藩で松下村塾を開き、明治の元勲となる人物を輩出した吉田松陰の半生を紹介し、彼がが残した言葉を作者の解釈を交えて解説する。
いくつか印象に残った項目を抜き出します。

・真心をもってすれば、不可能なことはない
性善説に立つ松陰は、誠を尽くせばすべての人間に伝わると考えていた。誠をもって実行し、集中して継続することが大切だという。

・志を立てることから、すべては始まる
物事を成し遂げる志士とは、高い理想を持ちどのような境遇でも節操を変えない人であるとする。最初に志を立てれば、やる気がついてくるし、目標が遠くにあってもたどり着けるという。

・学問とは「人とは何か」を学ぶもの
学問は人とは何であるかを学ぶものだといい、人と禽獣を分けるのは、五倫(君臣の義、父子の親、夫婦の別、長幼の序、朋友の信)、五常(仁・義・礼・智・信)を守るかどうかだとする。

・誰にも長所がある、これを伸ばせ
賢い者も愚かな者もいるが、だれにでもいくつかの長所はある。長所を伸ばせばいずれ立派な人になるといった。

・書き留めておくことが肝要
人の話を聞くだけにせず、聞いたこと、見たことを書く停めておくことが大事だという。松陰自身すべての旅で記録を残していた。本を読んだら抄録を残すことも勧めている。

・人の本性は善である
「人の本性は天の理で、天の理に悪はない。だから天の理によって生きる人間に悪はない」という考え方。
孟子の性善説を下地としている。

・小人は外見を恥じ、君子は内実を恥じる
小さな人間は名誉のないこと、収入の少ないことを恥じる。一方高貴な人間は徳義がないこと、才能がないことを恥じる。

・自分の価値観で人を責めてはならぬ
自分の価値観で相手を攻撃してはいけない。一つの失敗で全てを判断するのではなく、相手の長所を取り上げて、短所ばかり見ないようにする。

・武術を学ぶものは道徳も学べ
兵は凶器であり、これを仁義のためとするには、高い人格が必要とされる。

・諫言できぬ者は、戦でも先駆けできない
「主君をいさめる者の志は、戦いでさきがけするよりも大いに勝る」という。命を顧みずにする諫言は至誠の表れだと考えた。

感想・考察

吉田松陰は思っていたより過激な人物だったようだ。
学問を追求するより実践を重視した人物で、松下村塾で行われていたのも学問の追求ではなく実践的な思想の伝播が主だった。

松陰の思想には、天皇を中心とした皇国を守り諸外国民を排斥する「尊皇攘夷」がベースにある。
明治維新の主導していった多くの志士も当初は尊皇攘夷を原動力としながら、やがて海外諸国とのパワーバランスを把握して現実路線に切り替えていった。このことが松陰には変節に見え、かえって意固地になったのだろう。後半生は実に過激な生き方になっている。

今の私にとっては、正直に言って「主君に忠義を尽くす」という思想は、肌感覚として納得はできない。
ただ、宗教などと同じく「自分の外に自分以上の権威があって欲しい。責任持つのは辛いし、判断するのは疲れるから」が動機だと考えれば、理解はできる。

西欧諸国でも日本でも「神が死んで」しまったようだ。人々は外部に権威を求めなくなったのかもしれない。

多くの人がそれぞれの軸を確立したということなのか、「周りと一緒」が基準になったのか、判断の必要が減り思考停止してしまっているのか分からないが。

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