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Another

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あらすじ

 

榊原恒一は、父の仕事の関係で祖父母の家に一年間預けられることになった。母親は恒一生まれた直後に亡くなっており、その家には祖父母と、母親の妹である叔母の怜子が暮らしていた。
その一年間、恒一は夜見山北中学校に通うことになる。母と叔母がかつて通った学校だった。

恒一は、3年生進級のタイミングで転入するはずだったが、持病により入院してしまい、5月連休明けの初登校となった。

編入先の三年三組に入院時に見かけた「見崎鳴」がいたため声をかけたが、クラスメートが異常な反応を示す。恒一以外のクラスメートも教師さえも、鳴をそこにいないように扱っていた。
親しくなった友人たちに見崎について質問したが、怯えたように話を逸らされてしまう。鳴自身も恒一から話しかけれれるのを避けているようだった。

恒一は街で見つけた「夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の。」という名の店が気になり中に入っていった。そこは人形の展示販売を行うギャラリーで、たくさんの美しい人形が飾られていた。そしてその奥にはなぜか鳴がいた。

鳴は26年前、夜見北中学三年三組に起きた事件の話をする。

当時クラスで人気のあった生徒が、一学期が始まった直後に飛行機事故で死んでしまった。名前はミサキかマサキだったといい、男女もはっきりしていない。
その死を受け入れられなかったクラスメートは、彼もしくは彼女がまだ生きているように振る舞い、他のクラスメートも教師もそれに同調して一年を過ごした。そして彼らの卒業式の日に取った写真には、死んだはずの彼もしくは彼女が移っていたという。

その年以降、三年三組には「いないはずの誰か」が紛れ込み、席が一つ足りなくなる事態が頻繁に起こるようになる。
そのクラスには「災厄」が起こり、卒業まで毎月のようにクラスの誰か、もしくはその家族が急死するようになる。

恒一の代の三年三組でも、クラス委員の女子が会談で転落死をしてから、事故死や急な病死が連発するようになった。

「誰かをいないように扱う」対策も失敗し、クラスの担任教師も教室で自殺してしまう。

一度始まってしまった「災厄」はほぼ止めることができないが、15年前に一度だけ止めることに成功したのだという。
副担任三神の発案で「災厄が」止まった15年前の夏と同じように、夜見山で合宿を行い、神社にお参りに行くことが決まった。

ネタバレ感想

核心部分は避けていますが、以下ネタバレを含みます。
未読の方はご注意ください。

オカルト-ミステリは難しい。
でもさすがは綾辻さん、ルールの中できっちり謎解きミステリとして成立させている。

オカルト-ミステリの難しさの一つは、「どういうスタンスで読めばいいか分かりにくい」点だ。
「オカルトに見えるけれど、実は合理的に説明ができました」という話なのか、
「オカルトのルールの中で謎解きをしよう」という話なのか、最後まで判断がつかない。
私の場合、前者のつもりで読み始め「オカルト要素を排した合理的解釈」を探してしまったが、本書は後者の「オカルトルール内での推理」だった。

もう一つの難しさは「オカルト現象が論理が成り立たなくなる」点だ。
壁抜け能力者がいれば、密室トリックは成り立たない。
だが本書では、オカルト現象のルールが割と厳密で、そこから論理的な推理をすることは十分可能だった。

実際、本書におけるオカルト「災厄」のルールは以下のような感じだ。

・三年三組に「死者」が入り込むが、誰が「死者」なのか分からない。
・「災厄」は毎年必ず起きるわけではない。
・「災厄」が起きると、毎月クラスの関係者が死んでしまう。
・「災厄」で死ぬのは、三年三組の生徒、教師と、その二親等までの家族。
・「災厄」の効力が及ぶのは夜見山市内に限定される。
・紛れ込む「死者」は、それ以前の「災厄」で死んだ三年三組関係者。
・「死者」に関する情報は改ざんされ、その時点では誰も不自然だと思えない。
・「死者」本人の記憶も改ざんされ、自分が「死者」だとは気付けない。
・「災厄」が終わった後、「死者」についての記憶は消えてしまう。
・「死者」が紛れ込んだ分、誰かを「いないこと」にする対策は有効。
・一度始まった「災厄」は止めることができない。

さらに後から追加された情報として
・「死者」を殺すことで「災厄」は止まる。


本書のミステリとしての中核は「誰が死者なのか」だが、記憶や関連情報が改ざんされてしまうという設定では、論理的な推理はできないと最初は思った。
だが、上記のルールをよく見て考えると「ある人物」の発言は「災厄」の影響を受けていないと考えられる
その内容を土台にして、周囲の伏線に気づくことができれば「死者」に辿り着くことができる。

学園ホラー的な雰囲気やキャラクタの魅力が人気を高めたのだと思うが、ミステリとして読んでも十分面白い作品だった。

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