フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略
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要約
- 超要約
従来の「フリー=無料」は、結局はコストの付け替えに過ぎなかったが、デジタルの世界では限界費用がゼロに近づくので、本当に無料にすることも可能となった。
強力な「フリ―」の力を活用していくべき。
- フリーの歴史と種類
古くから「フリー=無料」はマーケティングに利用されてきたが、デジタル世界では複製や配布に関わる限界費用はゼロに近づき、新たな段階に入った。
一方、物理的な経済の世界では限界費用が生じるため、完全な「フリー」にはなりえない。
無料市場の種類は大きく以下の4つに分けられる。
・直接的内部補助
「一個買うともう一個が無料」など、単純にコストが付け替えられているもの。
携帯電話の本体価格への補助を月額料金でまかなうのも同様。
・三者間市場
テレビ広告など、番組を観る受益者と最終的に商品を買いコストを負担する人が異なる形態。
閑散期の安い航空券のコストを繁忙期の高額チケットでまかなったりするのも同じ。
・フリーミアム
機能を絞った無料版のコストを、有料の高機能版で補う。
ゲームの魔法石などもこれに含まれる。
・非貨幣市場
承認欲求によるボランティア活動など、貨幣に換算するのが難しい市場。
ネットの世界では「注目=トラフィック」と「評判=被リンク」に価値があるが、経済的価値に換算するのは難しい。
- フリーで儲ける
「フリ―」の力は強力で、ごく安くてもゼロとの差は大きい。
限界費用が小さくなる世界では、誰かが「フリー」に進む可能性があり、対抗する側も「フリー」の力を使わざるを得ない。
ビジネスでは注目と評判を集めることが何よりも難しく、そこに「フリ―」の力が活用できる。その後から注目と評判を利用して、儲ける方法を考えることができる。
ビジネスモデルとして以下のような例を挙げている。一部抜粋。
①直接的内部相互補助
・サービスは無料、製品が有料(PCのサポートサービスなど)
・ハードは無料、ソフトは有料(ゲーム機とソフトなど)
・○○円以上の注文で送料無料
②三者間市場
・コンテンツは無料、視聴者へのアクセスは有料(広告メディア)
・女性は無料、男性は有料(相席居酒屋)
・クレジットカード利用は無料、店側には手数料
③フリーミアム
・基本情報は無料、詳細情報は有料
・データ保存5GBまで無料、それ以上は従量課金。
・ゲームプレーは無料、ガチャ有料。
まずは無料で人を集め、信頼を勝ち取ってからであれば、課金への壁は低くなる。
感想
デジタルの世界で限界費用が低くなると、コストの付け替えでない本物の「フリー」が生まれる。それを無視した戦略は、もはや成り立たないのは間違いないだろう。
本書ではフリーで儲けるためのビジネスモデルをいくつか紹介しているが、それでもやっぱり難しいと感じる。
一つ目は、既存の固定費の問題だ。
デジタルに関わる部分の限界費用がどれだけ小さくなっても、それ以前の経済規模に合わせて固定費を膨らませてしまった企業は、目先の収益を手放すことが致命傷になる。
例えばNHKが最近値下げをしたが、月額で 1,260円→1,225円 の35円という値下げ幅が逆に反感を買っている。
フリ―メディアによる供給が増えたため、需要との関係でマス情報の価値は落ちてきている。この金額は「異様に高い」と感じられる。
だが経営側の立場で見ると、営利企業として顧客数が増えない中、客単価を削るのがどれだけ苦しいことか理解できる。直接の従業員だけで1万人以上、波及効果を考えれば数十万人以上の経済圏に影響を与えることを考えると、自分が経営トップであれば怖くて値下げはできないだろう。
「フリー」の本格導入が致命的な打撃となる業界については、軟着陸させるための施策が必要だと思う。
もう一つは「フリー」が特別じゃなくなり「注目と評判」を集めることができなくなってきたことだ。
本書が書かれた10年ほど前と比べて、確かに「フリー」は拡大してきた。
ブログやYoutubeなどの投稿数が急激に増えすぎて「フリー」というだけでは注目を得ることができない。
Youtubeなど、メジャーなプラットフォームは既に知名度のある人間でないと、入り込むことすら難しくなってきている。
であれば、新規ビジネスとしては小規模な実体経済の方が割が合う、となってきているようにも思われる。
「フリ―」に加えて新たなフロンティアを開く突破力が不可欠になっているのだろう。