人生で起こること すべて良きこと: 逆境を越える「こころの技法」
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要約
逆境と向き合い人生を切り開くための「こころの技法」を語る。
- 人生で起きること、すべて良きこと
「人生で起きること、すべて良きこと」と思い定めると、逆境と「正対」する力が湧いてくる。
苦境に陥ったとき「すべて良きこと」と捉えるのは難しいが、それでもまずは「人生で起こることには、すべて深い意味がある」と考えてみることで、内省を深め「体験としての気づき」を得ることができる。
- 人生において「成功」は約束されていないが、「成長」は約束されている
どれだけ頑張っても成功できないことは厳然とある。
それでもなお、自分を自分を支えるものを持つことが大切。
たとえ成果を得られなくても、目標を目指して、思いを込めて歩むなら「成長」することは間違いない。
- 「逆境」は素晴らしい「成長の機会」である
「艱難、汝を玉にす」という通り、人が成長するのは「苦しかったとき」。悪戦苦闘して壁を乗り越えたときに大きく成長する。
- 人生を分けるのは「何が起こったか」ではなく「どう解釈するか」
起きた事実を変えることはできないが、それをどう解釈するかは自分次第。
「逆境が与えらえたのは、大いなる何かが自分を育てようとしているから」という解釈が、逆境への強さを生み「生命力」が現れる。
著者のいう「大いなる何か」は、宗教的な「神や仏」ではなく、生命力を引き出すための「心理的技法」だと定義している。
- 「負け」から学ぶ
「勝ち」はどうしても慢心を呼ぶ。また勝つことは「様々な要因のバランス」の上に成り立っていて分析するのが難しい。一方で、負けたときには「要因」を特定するのが簡単。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ということ。
負けから学ぶ姿勢が大切。
- 「自己嫌悪」は「高い理想」の現れ
理想の自分を高く持つから、現状とのギャップを感じ「自己嫌悪」に陥る。
理想イメージがあるからこそ成長への意欲が湧くのだから「自己嫌悪」自体は悪いものではない。
- 「小さなエゴ」は「変わりたくない」
自分の中の「小さなエゴ」は、自分の未熟さや欠点、間違いや失敗を認めようとしない。
成長のため自分の問題点を直視しようとする姿勢があり痛みを受け入れる「大きなエゴ」を育てることが大切。
「大きなエゴ」を育てるには「小さなエゴ」の声を、肯定も否定もせずに静かに見つめることが必要。
- 「引き受ける」ことで「真の強さ」を身につける
直接の責任は他人にあることでも「自分の責任」として引き受け、自分の成長に結びつけようという心の姿勢が、こころの「真の強さ」を育てる。
- 自分を見つめる「内省日記」
誰にも読まれない「内省日記」に、生々しい感情を抑圧せずに書く。そこで現れる「静かで賢明な自分」と対話することで、深い思索が始まり、自己肯定の心が生まれる。
- 自分を愛せない人間に他人は愛せない
「自己嫌悪」の極みに生まれてくる「自己肯定感」がとても大切。
「未熟さや欠点も含めて自分を愛する」ことができなければ、「未熟さや欠点を含めて他人を愛する」ことができない。
- 好きになれない人には「感謝」のかたちから
「他者への嫌悪感」の本質は「自己嫌悪」。
自分が抑圧した「嫌な面」を他者の中身みると嫌悪感が増幅される。
「好き嫌い」は意志でコントールできる。
心の中でただ「ありがとうございます」と祈ることで、嫌悪感は薄らぐ。
「ありがたい」という思いが「ありがたい」という言葉を生むが、反対に「ありがたい」という言葉が「ありがたい」という心を生む。
- 過去も未来もない。あるのは永遠に続く「いま」
「どうしてこうなったのか」と過去を悔い、「これからどうなるのか」と未来を憂いても仕方がない。「いま」を生きることが大切。
- 「使命感」があると「解釈」を間違えない
理性的による判断には「こうしたら自分に有利だ」という私心が入り込む。「使命感」があると「私心」が消え「直観」が鋭くなる。
「逆境」を超えることで「解釈」の幅を広げることができるのと同時に、「使命感」を持つことでブレない軸が生まれる。
感想
著者は「逆境」が人を育てるという。
だが成長するという観点では「楽しむ」ことの方が、より直接的だと思う。
自分自身のことを考えても「逆境」に置かれたときよりは、「学び吸収するのが楽しい」と感じる「順調」なときの方に、より成長した実感がある。
「逆境」を知らなければ「他人の苦しみに共感する力」は育たないかもしれない。人間的に薄くなってしまう可能性もあるだろう。「粘り強さ」のない人間になってしまうかもしれない。
「逆境を経験すること」は間違いなく大切だ。
だが「逆境においてこそ人は育つ」とは思えない。
「やりたいこと」を見つけ育てること、「嫌なこと」を回避する工夫をすることで「逆境を避ける」のが、成果を上げるための最短距離だ。
「苦しみに耐え忍ぶ」ことは時に必要だが、それ自体を正当化し目的化してしまうのは間違っているとは思う。
ブラック企業からは逃げるべきだ。