死体埋め部の回想と再興
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あらすじ
『死体埋め部の悔恨と青春』に続くシリーズ第2弾。
前作ラストに至る前の2つの挿話と、前作ラスト後に続く二分岐したストーリー。
- 死体埋め部と雨降りリュージョン
前作最終話から遡る、6月の出来事。
織賀と祝部は、20代女性の死体を埋めに行く。
彼女は大きめの傘を持っていたのに、全身ずぶ濡れになっていた。
なぜ彼女は傘を差さなかったのか、祝部は「推理クイズ」に取り組む。
彼女の遺体処理をした女性は、もともとは別の男性を殺す予定だった。だが、急に対象が女性に変わっていた。
依頼人、被害者女性ともに、香水メーカで働いていたことから、祝部は「香水の匂いを雨で流す必要があった」と推理した。
その推理は、織賀に「承認」されたが、致命的な間違いに気づいた祝部は、ゲームの仕切り直しを求める。
- 死体埋め部の遊行と有業
「死体埋め部」は北海道での合宿を行った。
織賀と祝部は、北海道の観光地をめぐり、食事を満喫し、温泉旅館でリラックスしていた。
ところが、彼らは、4人の男女の死体を見つけてしまう。
一人は、胸を刺されていたが、出血はほとんどなかった。
一人は、首を絞めらたような跡をつけ死んでいた。
一人は、後頭部を殴られ、派手に出血して死んでいた。
最後の一人は、目立った外傷はなく、切り株に寄りかかって死んでいた。
最後の一人のポケットに毒薬の瓶があったことから「彼女が他の3人を殺し、最後に自分が服毒自殺をした」と仮説を立てたが、どうしても辻褄の合わない点が出てきてしまう。
二人は「死体埋め部」として、活動を開始した。
- 祝部浩也と追想リコレクション Route不在
前作最終話で、祝部が織賀を崖に落とした後の話。
祝部の部屋に忍び込んだのは「空き巣」で、織賀がいない世界線。
祝部は織賀の忘れ形見であるジャガーの維持に苦心していた。
月極駐車場などは高級車を受け入れてくれないため、割高のパーキングを使い、バイト代の大半を駐車料金に費やしていた。
前年度は織賀が助けてくれた履修登録も、今年はうまく行えず、バイトの入れ過ぎで授業にも出れない状況だった。
すでに織賀がいない中、ジャガーを維持することに意味はないと知りつつ、それでも手放すことができないでいた。
ある日、見知らぬ男がジャガーを駐車する祝部に声をかける。
その男は、ジャガーが織賀のものだと気づいていて「死体埋め」のことも知っていた。
織賀がいなくなった世界で、祝部は「死体埋め部」を引き継いでいった。
- 死体埋め部の再興と展開 Route再会
前作最終話の後、こちらは祝部の部屋に忍び込んだのが織賀だった世界線。
片腕を失った織賀に代わり、祝部がジャガーを運転する。織賀は死体と一緒に後部座席に座っていた。
今回の死体は、依頼者の女性だった。
もともと殺されて運ばれるはずだった男は、ジャガーのトランクに潜み、二人の会話を聞く。
依頼人の女性が殺されるに至った状況を「推理」する祝部の話を聞き、自らの犯罪が暴かれることを恐れた男は、死体を埋めている織賀たちに襲いかかる。
感想
『死体埋め部の悔恨と青春』の続き。順番通りに読むべき作品。
前作の終わり方が、バッドエンド寄りで、続編にどう繋がるのか気になったが、何事もなかったかのように「回想」から入り、最後はまさかの2ルート分岐と、斬新な展開だった。
かつて手に入れられなかったもの、友達との合宿とかを、なんとか取り戻そうと足掻く織賀と、自分を「承認」してくれる誰かが欲しい祝部は、共依存関係にある。
織賀のジャガーの維持に全てをかける「墓守エンド」では、祝部が内側から崩壊していくし、吹っ切って「死体埋め部」活動に邁進していく「再会エンド」は、祝部の異常性が際立っている。
客観的にみれば、どちらもひどいバッドエンドだが、祝部の主観ではハッピーなのかもしれない。
あるいは、どちらも、祝部内側の物語なのかもしれない。