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毒島刑事最後の事件

毒島刑事最後の事件

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その毒舌が癖になる。

シリーズ前作の『作家刑事毒島』を読んで、「中山七里さんは自己顕示欲が強いのに、努力が伴わない作家志望者が相当お嫌いなのだな」と感じた。

今回、続編にあたる本作を読んで「中山さんは自己顕示欲が強いのに、努力が伴わない全ての人が嫌いなんだ」と認識を改めた。

中山七里さん本人は相当自己顕示欲の強い人なのだと思うが、並外れた行動力で実績の方が自己顕示欲を追い越してしまっている。刊行のペースも異常だけど、その密度が凄まじい。一冊ずつ相当調べて考えられているのに、わけわからん速さで書きまくってる。まあとにかく凄すぎる。

ご自身のバイタリティを基準に判断されてしまうと「流石についていけません。。」となってしまうけれど、一方ではこれだけの行動が伴う人の言葉だから、毒島刑事の口を通した「ボロクソの毒舌」もすんなりと耳に入ってくるところがある。

SNSという増幅装置が自己顕示欲肥大を加速させている昨今、圧倒的な実績を背景にした中山七里さんの毒舌が、むしろ心地よく感じる。


というわけで、本書では毒島刑事が「卑小な実行犯」を追い込むシーンが本作の華なのだと思うが、ミステリとしての構成もなかなか面白い。

BBC版『SHERLOCK』のモリアーティーのように、実行犯とならず犯罪を立案し教唆する黒幕を追うスタイルだ。その構成が実行犯を卑小に見せるのに一役買っているというのもあるが、やっぱり「二階建ての論理パズル」というのが面白い。

そして最後のオチが、司法制度について様々な投げかけをしてきた中山七里さんからの「一つの解」として刺さる。個人的に同意することはないけれど考えさせられた。

やっぱりすごい。

あらすじ

5編の連作短編集。
一見すると人の良さそうな毒島刑事が、その毒舌で容疑者を追い込んでいく。

1.不倶戴天

人通りが途絶える深夜の大手町で銃を使った連続殺人事件が発生した。被害者たち同士の関係が見出せなかったため警察は連続通り魔事件として捜査する。

犯行のの背景に「教授」とよばれる人間の手引きが垣間見えた。

2.伏竜鳳雛

出版社を狙った連続爆破事件が発生した。毒島たちは、投稿作が審査落ちした作家志望者による逆恨みと考え、容疑者を絞り込んでいく。

ここにも「教授」の影が蠢いていた。

3.優勝劣敗

女性の顔に濃硫酸がかけられる事件が連発した。被害者女性たちは皆同じ「婚活パーティ」参加していたことがわかり、その参加者たちを容疑者として捜査していく。

4.奸佞邪智

認知症を患う老人が、かつて自分の子供を殺した犯人たちに復讐していく。警察は被害者の関係から殺人事件の怨恨によるものと考えたが、被害者の親族にたどり着くことができなかった。

毒島は「教授」の影を掴む。

5.自業自得

毒島と影から糸を引く「教授」との直接対決。



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