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エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する

エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する

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「努力をしないための努力」が最高の努力

本当に大切なことを見極めて実行する『エッセンシャル思考』の著者であるグレッグ・マキューン氏。

今度は「重要なことだけでも時間が足りない」人に向けて本書を出しました。


難しいことを「努力と根性」で乗り切ろうとすれば、全てがうまくいかない。

大切なのは「努力が尊い」という考えに縛られず「目的を達成するために一番簡単な方法を探す」ことが大切なのだと著者は言います。

私自身、著者の意見に強く同意します。

自分のことを考えても、周囲の人を見ていても「成果を出すには大変な思いをしなければならない」という思い込みが、成功を遠ざけていることもたくさんあると感じています。



ただ、この本の内容を実践しようとすると、いくつか罠もありますね。


一つ目の罠は「必要悪としての努力と根性」

「努力と根性」を唯一解だと考えるのは間違いだけど、100%排除してしまうと、それはそれで選択肢を狭めてしまう気がします。

例えばプログラムを書くときは、できるだけエレガントで軽い処理にしようと工夫するものです。でも、どうしても解決方法が思いつかないときには、カッコ悪くても処理が遅くなっても「力技」で解決してしまうこともあります。大変申し訳ありません。

目指すべきは「エレガントな処理方法を思いつく能力の向上」であって「力技レベルを上げる」ことではありません。とはいえ「力技」が使えないと可能性が狭まる可能性もあるということです。

そういう意味で、とくに子供の頃に「人生の基礎体力」を向上させるため「努力と根性」を経験しておくことは有益なのだとは思います。

もちろん、「努力と根性」は必要悪であって、目指すべきは「努力せずに成果を出すこと」ということを教えることが前提です。


もう一つ、罠になりうるのが「努力原理主義者の存在」でしょう。

世の中には「楽して成果を上げること」を敵視する人が一定数います。考え方の違いなので、正しいとか正しくないという問題ではありません。ただ「そういう見方をする人もいる」ということを認識しておかないと足をすくわれかねません。

まあ、そういう見方は徐々に難しくなっていくのだろうな、とは考えています。
とくにIT分野では「エレガントな解法」と「努力と根性」の差は圧倒的で、「努力した上での成果しか認めない」という考え方は苦しくなっていくような気がしています。

できるだけ頑張らないよう、一生懸命頑張りたいと思います。

要約

何をすべきかを説いた「エッセンシャル思考」の続編。なすべきことを「どうやって行うのか」を説く。

努力に依存しない「エフォートレス」なやり方を
・エフォートレスな精神
・エフォートレスな行動
・エフォートレスのしくみ化
という切り口で解説する。

エフォートレスな精神

・INVERT  頑張れば成果が出るとは限らない
まず変えるべきは「大切なこと」や「大きな成果」のためには「苦労をしなければならない」という思い込み。大切なことを簡単にするという思考の転換が必要。

・ENJOY 「我慢」を「楽しい」に変える
大切なことを「楽しく」行えるように工夫する。音楽など心地よいものを取り入れたり、ゲーム化してみたりなど。

・RELEASE 不用品を手放す
脳の処理能力は限られている。もう意味のなくなった目標やネガティブな感情などは手放して、身軽に動けるようにしよう。

・REST「休み」でリセットする
心身に無理をかけて頑張っても、効率は落ち成果につながらない。適度に休憩を入れ、十分な睡眠をとることが絶対的に必要。

・NOTICE「今この瞬間」にフォーカス
ノイズを排除して「今やるべきこと」に集中することが大切。集中力は誰トレーニングで鍛えることができる。

エフォートレスな行動

・DEFINE ゴールをイメージ
目指しているものが明確でないと無駄が生じてしまう。最終イメージを固めてから動き始めることが大切。

・START はじめの一歩を身軽に
何かを成し遂げるには複雑な工程が必要となるかもしれないが、まずは小さな一歩から踏み出してみる。行動を始めることで弾みがついていく。

・SIMPLIFY 手順を極限まで減らす
「目標を達成するのに最低限必要なのは何か」ということに集中し、関係ない部分は全て排除していく。

・PROGRESS 良い失敗を繰り返す
最初から完璧なものを作り出すことはできない。最小限のモデルを作って動かし、問題点を見つけて修正する。そのサイクルを回すことで結果的に早く成果を出すことができる。

・PACE 早く着くためにゆっくり進む
調子が良いときには予定よりも先に進めてしまおうとしがちだが、仕事量の上限を決めて一定のペースを保つべき。結果的にその方が早く仕事を終えることができる。

エフォートレスのしくみ化

・LEARN 一生モノの知識を身につける
「手軽な解決策」ではなく「原理原則」を身につける。さまざまな状況に応用できる原理原則を学ぶことは、結果的に労力を少なくすることにつながる。

・LIFT いちばんシンプルに伝える
全てを伝えようとすると複雑になり誤解を生んでしまう。ものを伝えるときは誤解の余地がないくらい徹底的にシンプルにする必要がある。

・AUTOMATE 勝手に回る「しくみ」をつくる
必要なことは自動的に処理できる仕組みを作ってしまうといい。ただ自動化すると不必要なものも続けてしまいがちなので、重要度の低いものはあえて面倒にしておくのもいい。

・TRUST 不信のコストを削減する
「その人を信じられるかどうか」の評価には多大なコストがかかる。信頼できる人間は宝。

・PREVENT 問題が起こる前に解決する
起きてしまった問題を解決するより問題を未然に防ぐほうがコストがかからない。

という内容です。
やはり『エッセンシャル思考』とセットで読むのが良いと感じました。

こちらで購入可能