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アイデア大全

アイデア大全

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Audibleのオーディオブックで聴きました。

こういうノウハウ系の本は「目で見ないと頭に入りにくいよな〜」と思っていたのですが、耳で聴いて理解するための色々なアイデアが詰め込まれていて、思った以上に分かりやすく頭に残りました。

いくつか例を挙げると、
・大きなフォント、太字などの強調表現の代わりに、エコーなどで「声質」を変えて、文章構造を理解しやすくする

・合図となるチャイムを鳴らすことで図表を見るタイミングが使いやすい

などなどです。

とくに「注1 ××」などと読み上げられると集中力が削がれるので、聞き流せるチャイムを使うとか素晴らしいアイデアだと思いました。

アイデア発想法を教えるだけでなく、きっちり実践に落とし込んでいるのがスゴイですね。

紹介されていたアイデア発想法はどれも興味深いのですが、とくに役立ちそうで印象に残ったものを3つピックアップして紹介したいと思います。

さくらんぼ分割法

既成のアイデアを改善したりバリエーションを増やしたりするのに役立つ。

要素を次々と2つに分解していくのを、さくらんぼの房が分かれる様子に見立て名付けられた。

やり方
①課題を簡潔に「〇〇を××する」と2語で表現する

②「〇〇」と「××」をそれぞれ属性を考え2つに分割する

③十分だと思うまで、それぞれの属性をさらに2つに分割していく

④分割した属性を変更したり組み合わせたりして新しいアイデアを作る。


①「懐中電灯」を「懐中する」「電灯」と分割

②「懐中する=持ち運ぶ」という要素を「小ささ」「軽さ」に分割

③「小ささ」を「細い」「短い」に分割
といったことを繰り返し発想ポイントを見つける



例えば「3mmくらいの極細ライトを、超小型バッテリと定消費電力LEDで実現」とか。

要素を次々分解して行くことで「ここを変えたら面白いかも」というポイントが見つけやすくなるということですね。簡単だけれども実用性の高い発想法だと思いました。

NM法T型

4つの質問で発想する。異種結合を生み出すのに特に適している。

やり方
①QK(Question of Keyword) 要するにどうなればいいか?
「どうなれば問題が解決されるのか」を抽象化する。

② QA(Question of Analogy) 例えば何があるか?
「〇〇するもの」といえば例えば何があるか、取り組んでいる課題からできるだけ離れた具体的な事物を上げる。

③ QB(Question of Background) そこで何が起きているか?
アナロジーであげた事例では何が起きているのかを考える。

④QC(Question of Concept) それは何かの役に立たないか?
アナロジーで考えたものを、具体的なアイデアに着地させる。


昔、自転車のタイヤは金属にゴムを貼り付けただけで乗り心地が悪かった。

①QT タイヤに弾力があって振動を吸収できればいい

②QA 振動を吸収する弾むものといえば何か=サッカーボール

③QB ボールが弾むのはなぜか=中に空気が入っている

③QC タイヤに空気チューブを使ってみよう
というのが本書に紹介されていた実話。


例えば自分の課題である「自由時間確保のため、仕事を早く終わらせたい」について考えてみました。

①QT 仕事を速くできればいい

②QA 仕事が速いといえば、超多作な中山七里さん

③QB 何をしているかというと「一日18時間執筆」「連続徹夜」

④QC 自分に活かせるものは「無い」。。。

ということで、これは失敗。


少し切り口を変えて

①QT 仕事を速くできればいい

②QA 仕事が速いといえば、色々活動しながら執筆してるひろゆきさんやホリエモン

③QB 何をしているかというと「過去のコミュニケーション履歴を使い誰かに代筆してもらう」「ポイントだけは自筆」、多分そうでしょう。

④QC 自分に活かせるものは「情報を再利用する」「発信が得意なパートナーを持つ」など

うん、こちらは使えそうです。

ポアンカレのインキュベーション

考えに行き詰まったときに使える方法。

やり方
①意識的集中的に問題に取り組む

②しばらく問題から離れ、休憩や他の活動に取り組む

③他の活動中にひらめきが訪れる

④得られたひらめきに意識的集中的に取り組む


これはとくに目新しい話ではなく、日常的に実感されていることだと思います。

でも筆者は「無意識が考え続けてくれている」という、ともすれば神秘主義に陥ってしまうような解釈を嫌い、「天啓は無意識からではなく固着からの解放で生まれる」と捉えています。

つまり、
①うまくいかないアイデアへの固着から離脱し、問題と直接は関係しない事へも関心が拡散する

②他の活動によって問題とは関係ないランダム刺激に晒される

ことによってアイデアが広がっている、という捉え方で、本書で紹介している他の「再現性のある科学的手法」と陸続きであるということです。

42個のアイデア発想法

ここから本書で挙げられている42個のアイデア発想法について概要のみ記載しておきます。

1.バグリスト

あるものについて「嫌いなところ」を列挙し、反面教師としてのヒントとする。

2.フォーカシング

身体の何かに名前をつけて質問し、感覚の変化を拾う。

3.マイセンテンスシート

取り組む課題について、どう感じるか身体感覚を書き出し、その語句を組み合わせてマイセンテンスとする。

4.エジソン・ノート

うまくいかなかったアイデアや失敗したビジネスも含め全て記録し、アイデアのヒントとする。

5.ノンストップ・ライティング

思いつくことを超スピードで書き留めていく。考えが追いつかないくらいの速さで描くのがポイント。

6.ランダム刺激

問題とは無関係な刺激を選び、刺激と問題を結びつけて自由に連想する。

7.エクスカーション

テーマとは関係ないカテゴリについて事項を書き出していく。たとえば「動物のリスト」からうさぎの特徴を製品に生かすなど。

8.セレンディピティ・カード

5W1Hなどをカードに記載し仮説を書き込み、カードを見直して並び直す。

9.フィンケの曖昧な部品

丸や四角など適当な図を組み合わせて形を作り、それを後付けで何らかの観念図として説明させる。完全な自由より何らかの制約のある方が発想しやすい。また自分自身の作ったものの方がアイデアを広げやすい。

10.ケプナー・トリゴーの状況把握

気になっていることを書き出し、緊急性・重要性・影響性を3段階評価して、課題と締切を決める。

11.空間と時間のグリッド

時間的、空間的な広がりを書き出し、因果関係を読み解く訓練をする。

12.事例−コード・マトリクス

分析対象となるテキストデータを用意し、文章をセグメントごとに分割し要約する。セグメントを抽象的にグルーピングし関係を考えていく。

13.P.K.ディックの質問

「それは本当は何なのか?」と自問する。

14.なぜなぜ分析

「なぜ」を5回繰り返して、根本原因を探す。

15.キプリング・メソッド

5W1Hで考える。

16.コンセプト・ファン

真ん中に課題を描き、右側に解決策を、左側にその原因や背景を、放射線状に書き込んでいく。

17.ケプナー・トリゴーの問題分析

問題が「生じたケース」と「生じなかったケース」を集め、その差異に注目する。

18.仮定破壊

問題の状況を書き出し、それが成立する前提をひっくり返してみる。

19.問題逆転

問題を言葉にして、それを対義語・否定形などに置き換えて意味を逆転させ、裏返した問題の解決策を考える。

20.ルビッチならどうする?

「自分の尊敬する人ならどうするか?」と考えてみる。

21.ディズニーの3つの部屋

ディズニーは「夢想家」「実務家」「批評家」を行うため、部屋を3つに分けていた。

22.ヴァーチャル賢人会議

頭の中で賢人同士の対話をシミュレーションしてみる。

23.オズボーン・チェックリスト

以下の視点からアイデアを広げてみる
・他への転用は
・他のものへの応用は
・変更したら
・拡大したら
・縮小したら
・代替したら
・再配列したら
・逆転したら
・結合させたら

24.関係アルゴリズム

問題を短い文で書き出し、その要素を関係を表す語(英語なら前置詞)を入れ替えて検討してみる。

25.デペイズマン

「場所、材質、人体の一部、時間、大きさ」などを入れ替えて新しいものを作り出す。

26.さくらんぼ分割法

課題を「〇〇が××する」と2語で表現し、次に〇〇と××をそれぞれ二つに分割する。これを必要なだけ繰り返す。

27.属性列挙法

改善したいものの「名詞的・動詞的・形容詞的」な属性を書き出し、それぞれに改善のアイデアを出す。

28.形態分割法

問題を独立変数に分解し、全ての掛け合わせで最良の解決を探す。

29.モールスのライバル学習

電信を発明したモールスが馬による伝達の仕組みから学んだように、あえて忌避するものから学ぶ姿勢を持つ。

30.弁証法的発想法

対立を上の次元で統合するという弁証法を発想に生かす。

31.対立解消図

対立しているものの必要条件を抜き出し、両者で共通している部分を探す。

32.バイオニクス法

生物の構造や機構を活かす。

33.ゴードンの4つの類比

以下のアナロジーを使って考える。
・擬人的類似
・直接的類似
・象徴的類似
・空想的類似

34.等価交換法

課題を分割し、特有の条件を除いた一般的事例として考え直してみる。

35.NM法T型

4つの質問によるアナロジーで考える。

36.源内の呪術的コピーライティング

使えそうな類似の既存事実を探し、新しい要素を追加して、由来を捏造する。

37.カイヨワの〈対角線の科学〉

問題に関して幅広い情報を集め、できるだけ隔たった分野での類似点を探す。

38.シソーラス・パラフレーズ

類語辞典を使い、要素を言い換えながらアイデアを広げていく。

39.タルムードの弁証法

重要な文言の単語を抜き出し、同義語などに置き換え解釈し直してみる。

40.赤毛の猟犬

アイデアを書き出し並べて見てみる。書き散らした原稿の上を転げ回る猟犬のイメージから。

41.ポアンカレのインキュベーション

真剣に考えた後、敢えて一度そこから離れると新たな発想が浮かぶ。

42.夢見

夢で見たものを記録し実際のアイデアとして活かす。

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