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僕たちはもう働かなくていい

僕たちはもう働かなくていい

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要約

AIやロボットの力を活用すれば、人間は望まない仕事をせず「やりたいこと」で生きていくことができるとする。

  • AIの可能性

AIは確実に世界を変えつつある。

AI脅威論もあるが、恐れるよりも活用すべきだと著者は考える。
人間が「AIを制御する意識を捨てないこと」が大事だとしている。

センサーが発達し安価になったことで、AIは「目」と「耳」を手に入れ、画像・音声認識の精度が急激に向上した。

さらに進化のステージを上げるためには、「手」を使い「身体性」を持って、実社会と関わっていくことが必要だとしている。

ロボット技術も新たなステージに入っている。

日本ではヒューマノイド(人型ロボット)を作ることに忌避がなく、研究は世界トップレベル。AIと組み合わせ、人間とある程度のコミュニケーションが取れるようになりつつある。

介護などでも「人間よりロボットに介護される方が気がラク」という需要があるし、コミュニケーションを避けたいという需要は全世代にある。

また、人間の機能を拡張するロボティクスは、障害を補助したり、加齢により衰えた機能を回復させることもできる。
最終的には「自分の分身」を作ることも可能だろう。

パーソナルモビリティも普及していく。

セグウェイのような歩行補助機器から個人用自動車まで、一人一台の移動手段も普及すると考えている。

AIによる自動運転と組み合わされば、移動時間も「自分の時間」として使うことができるようになる。

サービスの無人化も進んでいく。

無人コンビニや、ドローンによる配送など、人間の仕事がAI・ロボットに置き換えられる場面も出てきている。

現状では「人間の方が安い」から人間を雇用しているが、コストが逆転すれば、AI・ロボットへの移行は加速する。

不可逆な流れに逆らうのではなく、AI・ロボットを利用することを考えていくべき。

  • 変化する世界にどう生きるか

すでに「財」は必要以上に生産される。
経済は分配の問題になっていき「生きるために働く」ことは必須ではなくなる。

新しいテクノロジーは古い産業を淘汰するが、新しい産業を生み出す。
面倒な苦しい作業を AI・ロボットが担ってくれるなら、人間は「やりたいこと」を追求していけばいい。

そうなったとき「あなたは何をして生きていきたいのか?」が問われる。

感想

堀江氏らしいテクノロジーへの楽観的な見方には同意したい。

AI・ロボットが「苦しくてつまらない作業」を代行してくれるから、人間は「やりたいこと」をやればいい、というのは明るい未来像だ。

個人的には、その先の課題になるのは「富の分配」だと思う。
すでに全人類が必要としている以上の「富」が生産されているのであれば、経済は分配だけの問題だ。

生きるための生産性を気にせず、やりたいことを追求していけるなら素晴らしい。でも、富の分配が上手くいかなければ、やはり一部の人は生活に汲汲とすることになるだろう。

産業革命は資本の集中を促したが、人間が生産手段の一部だったこともあり、ある程度の足かせはあった。

だが、AI・ロボットによる産業の変化は、放置しておけばよりドラスティックな富の偏在を起こす可能性がある。
生産面だけをみるならば、ロボットで代用できるなら、高い人件費をかけたくないだろう。

一方、消費の面をみれば、富の極端な集中は「持っている側」にとっても望ましいことではない。富がある程度は分散しているから経済は動く。

現状をみると、その近郊ポイントは、少数の企業が情報インフラを独占し、その手のひらの上で、中小プレイヤーが「自由」を享受する形に落ち着いている。
個人的には何となく歪さを感じてしまう。

堀江氏の提唱する未来像は魅力的だが、さらに一歩進んで、この歪な構造から抜け出せれば、より素晴らしい。


ところで「人が何をされたくないのか? 空気読みのできるAI進化に期待したい」と堀江氏がいうのは、高度なアイロニー??

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