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飲茶の「最強!」のニーチェ

飲茶の「最強!」のニーチェ

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世界中に定められたどんな記念日なんかより

あなたが生きている今日はどんなに素晴らしいだろう

要約

OL”アキホ” との対話形式で、ニーチェの思想を解説していく。

 

飲茶氏は、哲学を「白哲学」と「黒哲学」の二系統に分けて説明する。「白哲学」が本流で、物事の背景にある「本質的なモノ」を探ろうとする。

一方の「黒哲学」は「実存哲学」で「白哲学」に反旗を翻す。意味や本質といった非現実的な存在ではなく、地に足を付けて「現実の存在」に目を向けるべきだ、と主張する。

 

実存を重視する考え方を推し進めると「意味がある」と感じていることは「たまたま今の社会で生まれた価値観」だと思えてくる。

しかし、結果「人生に特別な意味などない」 という「ニヒリズム」に陥ってしまうと、「生きることの高揚感」を失ってしまう

ニーチェはニヒリズムに陥った人は「目標も夢も持たずただ時間を潰す人」=「末人」になってしまうと予言した。

かつては、特に欧州では「キリスト教」が人々に「人生の意味」を与えていたが、ニーチェの「神は死んだ」との言葉通り影響力を失いつつあった。キリスト教に限らず「絶対的な価値観を与えるものは、いつか壊れてしまう」と考えていた。 

 

またニーチェは、本来人は「力への意志」を持ち強さを目指そうとするものだが、キリスト教が、弱者、謙虚な人が正しいという価値観の逆転をもたらした、と読み解く。キリスト教とユダヤ教は、虐げられたユダヤ民族のルサンチマンがベースになっており、力で征服する相手を貶める意図があったためだ。このような道徳観を「奴隷道徳」と呼んだ。

 

「絶対的な価値、絶対的な善などない」と考えていくと「絶望」に陥ってしまう。「ニヒリズムが導く絶望」から世界を救うため、ニーチェはまず「最悪の絶望」を想定し「永劫回帰」という概念を持ち出した。「有限の空間の中で有限の物質が作るパターンは、永遠の時間の中ではいつか再現される。人も世界も同じことを永遠に繰り返しているだけ」という極端な状況だ。

「すべては永遠の繰り返し。結果を変えることはできない」というのは虚無的な状況だが「でも、それでも! 今この瞬間を力強く肯定して生きよう!」と主張する。未来に価値を置く生き方は、未来が減るに従い力を失う。今この瞬間の感覚に思いを馳せ、その時の幸せに集中する。死の間際に永劫回帰を願えるような強さをもった人を「超人」と呼んだ。

 

世の中にある「愛」「夢」など「本質的な言葉」が溢れているが、それよりも「あなたが今ここに、現実に存在するということ」が、この世で最も大事なことだ、とまとめる。

 

感想・考察

飲茶さんの本は何冊か読んできたが、抜群に分かりやすく面白い。

哲学関係の本は「入門書」をうたっていても、厳密であろうとする分、最初はなかなか伝わってこない。何度か読み込んで意味を掴めると面白いのだが、そこに辿り着くまでが大変だ。

飲茶さんは伝わりやすさに重点を置いた説明をしてくれるので、とりあえず頭の中にイメージができる。その後にもう少し厳密で難しい本を読むときの羅針盤になってくれるところがある。

本作では作者自身が哲学の世界に入っていった経緯が語られていた。実話なのかフィクションが混じっているのか分からないが、自己開示して自分自身の問題として取り組む姿勢を見せることは正に「実存主義」的だ。

Life is not a  problem to be solved, but a reality to be experieced.

というキルケゴールの言葉が好きで、かつて苦しんでいた自分を力づけてくれた。キルケゴールの思想背景に実存主義があることを知り「人生はその意味を探るためにあるのではなく、今ここで経験すること自体を味わう旅なのだ」ということが更に深く理解できるようになった気がする。

本当に素晴らしい作者さんだと思う。たくさんの人に読んでもらいたい。

哲学は「人生の意味とかを、モテなそうなオッサンがゴニョゴニョ語っているだけ」ではない。多分。

 

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