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世のためを思い、他人を敬い、精進を怠らない。
その三つを忘れなければ、人はどこでも、いつの時代でも生きていける。
その一つでも欠いたら、生きる資格はない。

あらすじ

磯山香織は警察で剣道を教える父を持ち、3歳の頃から兄と一緒に剣道を習ってた。宮本武蔵の「五輪書」をボロボロになるまで読み込むような剣道オタクで、

中学では全国二位の成績のエリート剣士に育つ。
香織の兄は小学生の頃、父の教え子に打ち負かされてから、県道から離れてしまった。それ以降、香織はより「勝敗」にこだわるようになる。

 

もう一人の主人公、西荻早苗は姉とともに日本舞踏を習っていたが、中学から剣道を始めていた。

早苗の父は発明を大企業に盗られ、裁判でも負けて自暴自棄となり、離婚して家を出ていってしまった。それ以降早苗は「勝敗」から離れようとする。剣道を習っていても勝ち負けより「剣道自体を楽しみ自分の成長を楽しむ」ことを目指していた。

 

中学時代最後となる試合で香織は早苗と対戦する。全国二位の実績を持つ香織は、未だ無名の早苗に負けたことに大きなショックを受ける。

香織は多くの高校から剣道の実績による推薦の打診を受けていたが、さなえのいる高校を選んだ。

 

早苗の戦績にムラがあり勝ちに対するこだわりがないことに香織はいらだつ。

早苗はクラスでも剣道部でも浮いている香織に話しかけようとするが、香織は冷たい態度を崩さない。

 

香織は実力を買われ剣道部でも重要な位置を占めるようになり、早苗も徐々に才能を開花させていく。

全く違うスタイルを持つ二人の剣士が、反発しながら徐々に重なり合っていく。

 

感想・考察

清々しい「青春スポーツ物語」だった。ちょっとダークな作品の多い誉田哲也さんにしては、珍しく爽やかな話だ。

章ごとに二人の主人公の視点が切り替わる構成も、テンポが良く読みやすくて面白い。

 

不器用な頑なさを持つ香織だが、両親や部活の顧問、道場の師匠や武道具店主など、多くの人に見守られ支えられながら生きている。

勝つことに執着し自分自身の強さに頼る香織だったが、生きる意味を見失ってしまった時、彼女を支えたのは「人とのつながり」だった。

 

香織とは対極的で気楽に見える早苗も、過去へのこだわりから抜け切れていない。彼女を救うのもまた、家族や周囲の人間、そして香織だった。

 

続編が出ているようなので、そちらもそのうち読んでみよう。 

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