武士道エイティーン
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あらすじ
「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」に続くシリーズ第3弾。
女子高生剣士 磯山香織と甲本早苗の友情と成長の物語。
高校3年生になった香織は東松高校剣道部のエースとして活躍する。団体としても個人戦としてもインターハイ全国大会に出場を決めた。
2年生のときに香織と離れ剣道強豪である福岡南高校に転向した早苗も、団体戦のメンバーとしてインターハイ全国大会にコマを進めた。
日本舞踊から転向した早苗は、その独特の足さばきが強みの一つであったが、不自然な力のかけ方を続けた結果、練習中に靭帯を損傷してしまった。
大会への出場も危ぶまれたが、友人や部活動顧問たちの力添えで個人戦への参加は認められ、しかも香織との直接対決ができるよう大将としての参加となった。
中学3年生の初対決から3年を経て、香織と早苗が直接対決を果たした。
大会後、香織と早苗は進路に悩む。
香織は父と同じく警察で剣道の指導教官になりたいと考えていたが、現実的には女性には難しいと聞かされ、推薦で行ける大学への進学を決めた。
足のケガから剣道を諦めた早苗は、推薦を受けることもできず勉強への取り組みも遅れていたが「武士道精神をはじめとした日本文化」に強い興味を持ち、浪人をして大学進学することを決意する。
二人の高校時代は終わり、それでも一緒に武士道に通じる道を歩き続けている。
感想・考察
前作までと同じく香織パートと早苗パートが交互に展開していくが、今作では別視点からの描写も挟まれて、より立体感のある話になっている。
早苗の姉でファッションモデルである 緑子の悲恋の話とか、香織の師匠である桐谷玄明による道場の来歴の話だとか、早苗の剣道部顧問である吉野の青年時代のヤンチャな話とか。それぞれに深みがあって面白い。
とくに最後、香織の後輩 田原美緒が「守破離」で技を体得していく話は味わい深い。見てまるごとコピーするのを得意とする美緒は、香織を慕いその技を吸収していく。だが自分が「香織の劣化コピー」であることに悩み、オリジナリティを追求し始める。
素直な人間は吸収が早い。取り込む段階では「無判断完コピ」が一番効率的なのだろう。取り込んで自分のものとした後だからこそ「自分の判断」を介入させることができるのかもしれない。とくに自分の軸を作るべき段階では、「最初から拒否」してしまう頭でっかちさが邪魔になることもあるのだろう。
剣道のような武道は「まず判断させずに型を叩き込む」ことから始まる。そういう身に付け方をすべきこともあるのだろう。