ファンタジスタドール イヴ
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万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
こじらせマッドサイエンティストたちの物語
あらすじ
大兄太子は幼いころ両親が離婚し、父親に育てられた。
母を知らずに育ったため大兄は「女性の身体」に歪んだ思いを抱いてしまう。
父に連れられていったルーブル美術館でみた「ミロのヴィーナス」に数時間離れられないほど魅了される。また家では偶然着替えを見てしまった女中に誘惑され、さらに歪んだ感情を持つにいたる。
小学校では、女子の入鹿と科学に興味を持った仲間として親しくなるが、密かに彼女の着替えを覗いてしまう。卒業で別れるとき、彼女が大兄の覗きに気づいていたことを知り、激しい後悔と恥ずかしさに襲われる。
その反動で勉学に没入した大兄は、日本でトップの大学に入り物理学を学ぶ。大学で知り合った笠野に遊びを教えられ、大兄も少しずつ世界に馴染んできたが、女性のいる店に誘われた時、生身の女性を感じ恐慌をきたしてしまう。
後輩の女性 中砥 から好意を寄せられ、大兄も彼女に関心を抱くが、女体への恐れが上回り彼女に触れることもできないでいた。
出口がないまま溜まった歪んだ欲望は捌け口を求め、大兄はサイエンスの思考に没頭した。中砥との会話からヒントを得て「物体の質量そのものが持つベクトル」の存在に気づき、それをコントロールする研究に着手する。
やがて同い年の遠智が大兄、中砥たちのチームに参入し、研究は急速に前進する。
遠智は大兄の「女性の身体」に対する異常な関心を見抜く。また遠智自身も恋人に裏切られた経験から「女性の精神」に対して崇高な理想を抱くようになったことを告白する。
大兄たちは研究理論を発展させ、物質自体がもつベクトルを利用して化学反応に寄らずベンゼン環を作る質量傾斜荷重実験を行ったが、遠智の仕掛けにより失敗してしまう。また事故を防ごうとした大兄は片腕を失ってしまった。
大学での研究は中止させられてしまったが、米軍などのスポンサーを得て、大兄と遠智はさらに研究を前進させる。
大兄と遠智の目標は、肉体的にも精神的にも完璧な女性を無から生み出すことだった。
感想・考察
「ファンタジスタドール」というアニメの前日譚とのこと。
この小説の狂気をはらんだ雰囲気からして、アニメの方も退廃的で終末感あふれる「けもフレ1期」的なものかと思ったが、WEBを見るとずいぶん違うようだ。テンプレ通りの美少女アニメだった。
本作はこれだけで完結したストーリーにはなっていないが、巻末の「研究所の歴史」的な部分は中々凝っていて面白い。
女体に歪んだ執着を持つ大兄とか、女性の純粋な精神にこだわる遠智が、ファンタ辞したドールの生みの親ってところが、ロリ萌え系美少女アニメ愛好者層へのアイロニーなのだろうか。。