止まない霧
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あらすじ
24歳の健太は母が入院したという知らせを受けて実家に戻った。雨の降るその日、実家の近くで高校時代に初恋に落ちた女性 加藤知子を見かけた。
同じタイミングで実家に戻っていた兄が知子に傘を貸していて、翌日健太は傘を返しに来た彼女と再会する。彼女は健太のことを覚えていなかったようだが、犬を探していると言い、連絡先を残していった。
霧に包まれたように捉われていた健太を、高校時代の初恋の記憶が突き動かす。
健太は数日後にまた実家に戻り、知子に連絡を取ろうと考えた。
実家に泊まった健太は深夜コンビニに買い出しに出かけ、彼女の家が火事になっているのを発見する。
知子が家に取り残されていることを知った健太は、単身で乗り込み彼女を救い出そうとする。
感想・考察
切ない話だ。
霧に包まれたように何かに縛られ、自分から動き出すことのなかった人生。 ようやく一歩を踏み出したと思うと、直後に悲劇が襲いかかる。そして「本当につまらない人生だ」と感じたまま最期を迎える。ある意味救いがない。
だが一方、何かに熱中することもなく、順当に歩んでいるというアリバイ作りでしかなかった人生のなかで、最後だけでも自分の足で確かな意思をもって歩いたことに意味があったのかもしれない。
自分の人生は自分の選択でしか積み重なっていかないものなのだろう。