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悪いうさぎ

悪いうさぎ

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感想・考察

醜い大人たちの世界で必死に生きる少女(と元少女)のお話。

ロクでもない大人たちの世界と対峙する少女たちの必死な葛藤に引きずり込まれる。反発しながらも親からの歪んだ愛情を受け入れようとしたり、ときに爆発したり。みずみずしくて美しい。

それがラストで、大人のロクでもなさが限界突破してしまう。
あまりにも理不尽な結末で、少女たちの健気さに感情移入していた分、読後には後味の悪さが残った。

「大人として生きる人」には重すぎる話かもしれない。

あらすじ

女性探偵の葉村晶は、関わりのある探偵事務所からの依頼で家出した女子高生平ミチルを迎えに行く。同行した男性探偵が暴走してミチルに襲い掛かり、助けようとした葉村は負傷してしまう。

重傷を負い入院した葉村が退院した直後、行方不明になったミチルの友人 滝沢美和の捜索依頼が来る。ミチルの父親と美和の父親は二八会と呼ばれる親睦会のメンバーで、ミチルから葉村の評判を聞き依頼したということだった。

葉村は美和が失踪直前に会いに行ったと思われる柳瀬綾子を探す。だが彼女は夜の公園で殺害され発見されてしまった。

葉村は、ミチル・美和・綾子の共通の友人である水地佳奈が事件に関わっていたことを突き止めるが、佳奈もしばらく前から姿を消していた。借りていたアパートも荷物一つ残さず退去するなど徹底して痕跡が消されていた。

柳瀬綾子を殺した男が逮捕され、彼が持っていたリストに美和の名前もあったことから美和も殺されたものとほぼ結論付けられていた。
だが、綾子殺害現場の雑さと、美和・佳奈が失踪したときの手際の良さを比べ、同一犯ではありえないと葉村は考えていた。

佳奈が失踪する直前に「割のいいバイトがある」と美和に伝えていた。また弟には「ミズチ(鮫)がうさぎになるのよ」という謎の言葉を残していた。

葉村は深夜に美和の母親から電話を受け彼女の元に向かおうとしたが、途中で何者かに襲われトラックのコンテナのようなところに数日間監禁されてしまう。
何とか抜け出した葉村は、彼女が監禁されている最中に美和の母親が自殺してしまったことを知る。

美和の母親の葬式に訪れた葉村は「美和は生きていた」と聞かされるが、その場に現れた少女が本当に美和なのか判断することができない。美和の父親に聞いても口を閉ざして答えない。ミチルに確認を頼もうとしたところ、彼女も失踪してしまったことを知る。

真相に辿り着いた葉村はミチルの救助に向かい、自身も「うさぎになる」決意を告げる。

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