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メーラーデーモンの戦慄

人はどうしようもない真実とぶつかった時、探偵になるしかない。真実を楽しまなきゃ『メーラーデーモンの戦慄』

こちらで購入可能

「ひとから与えられるのではなく、自分で真実を掴み取れば、パズルを解く過程で自然と覚悟が完了する」
早坂さんは「考えることを大事にする人」だ。

早坂吝さんの作品は、オチのインパクトが強い。そのせいか「バカミス」作家という印象がある。

でも、早坂さんの作品を色々読むと、徹底的に考え尽くしている実は真面目な人なのだとわかる。とにかく自身が徹底的に考えているし、「読者に考えることの楽しさを伝えたい」という想いも伝わってくる。

シリーズの第1作◯殺人事件』とかオチが衝撃的だったし、本書の一つ前『双蛇密室』の「犯人は◯◯だった!」は、間違いなく史上初だろう。

ミステリは、いろいろ出尽くしてしまった感もあるけれど、早坂さんの作品からは「かつてないものを生み出そう」という思いの強さを感じる。勢いで押してくるイメージがあるけれど、勢いだけじゃ成り立たない冷静な計算があって、本当によく考えられていると思う。

そして読者に「ほれ、自分で考えてみろ」と、結構露骨に煽ってくる。私にはこれが心地よかったりする。

物語を書くような作家さんたちは、まとまった思考を組み上げる「思考体力」のある人なのだと思う。なかでもミステリでは「考えること自体の楽しさ」にフォーカスした人が多い。




昨今はでは、普通にしていると情報に溺れてしまう。

毎日何百通のメールをみて、隙間時間がもったいないと感じてSNSを見たり、Youtubeを見たり、オーディオブックを聞いたりしている。

知識は増えたし、情報に対する反応速度は上がってきた。

でも、じっくり腰を据えて自分の考えを紡ぐ時間はむしろ減っていて、「思考体力」は落ちている。「情報を遮断してじっくり考える時間」が、今ではむしろ貴重な存在になっている。

役立つ情報を得るためじゃなく、単純に考える時間を楽しむ「ミステリ」というフィクションは、むしろ贅沢な楽しみになっているのだと感じる。

「読者への挑戦状」、スルーしないで楽しもう。

あらすじ

娼婦にして名探偵 上木らいちシリーズ

地味なOLのガラケーに、メーラーデーモンから「一週間後にお前は死ぬ」というメールが送られた。
本人は忘れてたが、その当日、彼女と犬しかいないはずの部屋で殺害され、最初の被害者となる。

上木らいちの常連客のガラケーにもメーラーデーモンからのメールが届く。彼はらいちのマンションからの帰り道、何者かに襲われて殺され、2番目の被害者となった。

従軍経験のある老人のガラケーにも死を予告するメールが届き、その予告通り第三の殺人事件が発生する。

らいちたち被害者の関係者は、ガラケーの通信キャリアの担当課長が事件に関係しているという疑いを持った。

らいちたちが彼を尾行していると、彼は夜の学校で爆弾を使い自殺する。そこには彼の知り合いである競合通信キャリアの関係者が集まっていた。


その頃、捜査一課刑事の藍川は、自分の出生に関わる事件の真相を知って失意し辞職を申し出た。
同じように心に傷を負った人たちの集まる「青の館」にいた。

藍川は、部下である小松凪の奮闘を知り、らいちが自分に宛てたメッセージに気づき、再び事件に立ち向かうことを決意した。

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