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ムゲンのi : 上・下

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圧倒されました。

医師としての経験なのでしょうか。近親者の死を乗り越えようとする人たちに寄り添い、勇気づけるようなお話です。

幻想的な夢の世界での医療ミステリで、いろいろな要素がテンコ盛りですが、決して煩くはなく、加速していくストーリーに引き込まれていくうちに、暖かい想いが心に満ちていくようです。

素晴らしい作品です。

あらすじ・概要

神経精神科医の識名愛衣は、特発性嗜眠症候群(イレス)の患者を担当していた。これまでに数百人しか症例がなく治療法も分かっていない奇病だったが、愛衣の勤務する病院に一度に4人も入院し、1人は先輩が担当、3人は愛衣が主治医となっていた。

疲れが溜まった愛衣は実家に戻り、父と祖母、ペットの猫とウサギに久しぶりに会う。霊能者だった祖母はイレスの患者について「患者は心が弱っている時にマブイ(魂)を抜き取られている。ユタの資質がある愛衣がマブイグミをすれば、彼らを救える。彼らのククルを探せ」という。

愛衣が祖母に教わった方法を試したところ、患者の夢の世界に潜り込んでいった。愛衣はパートナーとなる自分のククルと共に、患者のククルを探すため夢の世界を冒険する。

第1章 夢幻の大空

かつてパイロットだった父と一緒に飛んだ空を大切にしていた片桐飛鳥。自分もパイロットを目指していたが、とある事故のため片目の視力を失いパイロットとなることを絶望していた。

第2章

冤罪事件を主に扱ってきた弁護士の佃三郎は、元恋人を殺した罪で有罪判決をうけた男久米が自白を撤回し無罪を訴えた事件を担当した。何者からかの情報で検察側が根拠としていた秘密の暴露の瑕疵に気づいた佃は久米の無罪を勝ち取るが、その後、彼の正義を揺さぶるような事件が起こる。

第3章 夢幻の演奏会

加納環はあるトラウマからピアノを弾けなくなったが、ある男のお陰で徐々に演奏の楽しさを取り戻していく。しばらく地方に転勤していた環は、久しぶりにその男と会った時、彼が付き合い始めた女性に支配され精神を病んでいることに気づく。彼にその女性から離れることを勧めた環は、やがて恐ろしい事態に直面する。

第4章 夢幻の腐食

環のマブイグミで、かつて愛衣自身が巻き込まれた通り魔事件の犯人についての話を聞き、愛衣は動揺し倒れてしまう。数日入院した後、実家に戻るがそこでは状況が一変していた。

愛衣の先輩医師である杉野華が担当しているもう一人のイレス患者は、施錠された特別病室に入れられ、カルテの閲覧もブロックされていた。普段は優しい院長の袴田も、その患者について聞くと恐ろしい剣幕で拒絶する。

第5章 そして、夢幻の果てへ

。。。

感想・考察

生きることは苦しいかもしれない。でも、それを乗り越えるのは愛。作者からのメッセージが届く。

同じ作者の「死神シリーズ」のような雰囲気だが、もう一歩踏み込んでいる感じだ。

「夢」の中では論理が崩壊しているので、論理パズルとしてのミステリにはなっていないが、違和感を感じさせる伏線が散りばめられ、きちんと回収されていくのは気持よく、一気に引き込まれていく。

傑作だ。

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