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神話の密室―天久鷹央の事件カルテ―

神話の密室―天久鷹央の事件カルテ―

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あらすじ

並外れた診断能力を持ちながら対人コミュニケーションに難のある天久鷹央と、体力のある小鳥遊優が、不思議な事件を解いていく「医療ミステリ」。

  • バッカスの病室

小鳥遊が救急担当をしているとき、小説家の宇治川が救急で運ばれてきた。

宇治川の症状は単なる飲み過ぎのようだったが、妻と担当編集者が来院するとパニックを起こしてしまう。もともと宇治川はアルコール依存症治療として翌週からの入院を予定していたため、そのまま精神科の閉鎖病棟に前倒し入院させた。

ところが翌日、宇治川は病室で急性アルコール中毒のような症状を見せる。院内でアルコールを入手する手段はなく、訪問してきた宇治川の妻も担当編者にも彼にアルコールを飲ませる理由がない。

宇治川は「みんなが自分を殺そうとしている」と言う。

病院側では病室にアルコールが隠されていないか徹底的に調べ、訪問者が持ち込むことも無いよう手荷物検査も行った。だが宇治川は翌日も急性アルコール中毒に陥った。

アルコールを持ち込めなかったはずの病室で、宇治川が急性中毒症状に陥ったのはなぜか。

  • 神のハンマー

小鳥遊は後輩の研修医である鴻ノ池舞と一緒にキックボクシングの試合を見に来ていた。

その日のメインイベントは、大学時代に小鳥遊にコーチしていた早坂翔馬のタイトルマッチだった。控室に招待された小鳥遊たちは、早坂の妻と、彼女の兄であるリングドクターと緊迫した時間を過ごした。

早坂は苦戦しながらもチャンピオンを倒しベルトを奪い取った。
だが、チャンピョンベルトを巻いた直後、早坂は崩れるように倒れこんでいった。

警察は病気による自然死だと診断したが、早坂の妻は彼が「殺される」と言うのを聞いたという。

小鳥遊は真相解明に向けて捜査を始める。

感想

天久鷹央シリーズは、数ある知念実希人さんの作品群の中でも、医学知識をミステリにガッツリ組み込んだ「正統派医療ミステリ」だ。

単に病院を舞台にしているだけでなく、病気や薬などの知識がミステリを解く鍵になっている。それなのに医学の素人が読んでも十分楽しめるエンタテインメントになっているのはやっぱり凄い。

1話目「バッカスの病室」では患者として小説家が登場していて、普段は「医学知識のある小説家」なのに対し「小説家としての苦しみを愚痴りたい医者」に逆転している感じが面白い。

「刊行ペースはゆっくりでも良いです。SNSで論理的矛盾を指摘したりもしません。叙述トリックのネタバレも厳に慎みます。今後も面白い作品を書き続けてください」とお伝えしたくなった。。

2話目「神のハンマー」は、著者の格闘家としての顔が見える話だ。
最後まで読んでから読み直すと、泥臭い戦闘描写がかえってカッコよく見えてくる。「闘う人たち」の話だが、その流れでも伏線をしっかり組み込んだ医療ミステリにもなっている。

早速次回作が楽しみになってきた。

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