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余命10年

余命10年

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誰にもあと10年生きられる保証はない。今日を大事に生きようと思えました。

あらすじ・概要

20歳の茉莉は数万人に一人の難病にかかり、「この病気に治療法はなく、10年以上生きた人はいない」と伝えられる。2年間の入院闘病生活ののち、自宅に戻るが常に「余命10年」のタイムリミットを意識しながらの生活となる。

中学時代の同級生の沙苗に、アニメのコスプレ・同人誌販売を進められ、以前からの夢だった漫画に再挑戦をしてみたり、

優しい姉、桔梗ちゃんの結婚を心から喜びながら、変わっていく家族に寂しさを覚えたり、

小学校時代、仲が良かったのにイジメから救えなかった美幸に謝りに行ったり、

短大時代の友人たちの微妙なチャラさに苛立ったり、

小学校の同窓会でであった和人に告白され、時間をかけて恋に落ち、お互いを支え合う存在となったりしていく。

そして命の終わりに、茉莉は自分の選択で人生を作り上げていく。

感想・考察

「自分の幸せを実感できる楽しいことを見つける」

「自分の居場所を見つける」

10年の寿命の中で茉莉が追い求めたものはこの二つだと思う。

小学校から短大時代までの友人、恋人、家族との人間関係を大切に扱い、「漫画を描きたい」という夢をギリギリまで追い求めた。

命の限りが見えたから茉莉は精いっぱい生きたのかもしれないが、自分のことを考えても後10年生きられる保証など実はどこにもない。今この時間を大事にしたいと思わされる。

作者自身も若くして亡くなったとのことだ。

友達関係や恋愛の始まりなど、とりとめのないバラバラとした描写が、かえって20代女子のリアリティを感じさせた。また病気で日々弱っていく心と体の描写にも鬼気迫るものを感じた。

泣かせるにくるキレイな小説も好きだが、とりとめのない語り口、まとまりのない粗削りさがリアルを感じさせ、読者の心を動かす本だ。

ちょっと長くて途中ダレるが、最後まで読み切ると意味が分かってくると思う。

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