失踪日記
こちらで購入可能
創作の苦しみ、波乱万丈な人生をコミカルに描く。
勇気を与えてくれる一冊!
要約
辛くて暗くなるからリアリズムは排して描いたという2回の失踪とアルコール中毒病棟入院の記録マンガ。
夜を歩く
1989年11月、「仕事したくない病と二日酔い」で、ひとつ仕事をすっぽかして1週間友人の家に逃げ、そのまま全部の仕事をすっぽかす。
家と仕事場を往復してただ酒を飲んでいるうちに不安感に押しつぶされ、自殺願望が生まれ山中に向かうが死ぬことはできず、そのまま山中で生活をする。畑の大根やゴミ箱の残飯を漁るガチのホームレス生活。他人との交渉は全くなかった。シケモクを拾っているところを警察官に見つかり家族からの捜索依頼があったため家に戻ることになる。
街を歩く
1992年4月、仕事に復帰していたが原稿を落としてまた失踪。
前回と同じくホームレス生活をしていたがスカウトを受け配管工の仕事に就くことになる。
クセのある人々に囲まれた生活の中、社内報にマンガを投稿したりしていた。社員から譲り受けた自転車が盗難車だったことで警察に捕まり、そのまま家に戻ることになった
後半は吾妻氏の漫画家人生の振り返り。19歳でデビューした吾妻氏は週刊連載のペースに苦しめられつつ作品を量産していく。20代前半に編集のアイデアで生まれた「ふたりと5人」はイヤイヤながら描いていたという。またこの頃、アシスタント結婚している。
20代後半頃は仕事量が限界を超える。自分の描きたいSFパロディ等を追求するうちに徐々にマイナー雑誌に活動の場が移り「不条理日記」などもこの時期に生まれる。
30代になり同人誌「シーベル」を立ち上げコミケで販売していた。ここからまた人気が出始め連作を増やしていったが、この後、原稿を落として失踪する日々に繋がっていく。
アル中病棟
20代前半は酒が飲めなかったという吾妻氏だが、繰り返し飲み続けるうちにアルコール依存となる。1998年には連続飲酒状態となり内臓が破壊され幻覚症状も始まった。寄って寝ていたところをオヤジ狩りに襲われ家族に助けを求めたところ、そのまま精神病棟に連れられ拘束される。
後半ではアル中病棟で出会った個性的な人々を紹介する。
感想・考察
壮絶な人生だ。
自分自身の繊細な感情に揺さぶられながらも同時に自分を客観視する醒めた視点も持っている。
「サブカル」ながら、反主流を気負うわけではなく肩の力を抜いた作風。
それでも「自分の苦しみ」を作品にしてしまうくらい表現への欲求が強い。
吾妻ひでお氏については、アニメ化した「ななこSOS」とか新井素子さんとの対談的な本とかしか知らず当時は穏やかな印象しかなかったが想像以上に強烈な強靭な精神を備えた人だった。
以前の作品が Kindle化されたら読んでみたい。