中山七転八倒
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小説家 中山七里さんの日記。2016年1月から約一年半の出来事を綴っている。
本当に単なる日記だけど、やたら面白かったので、印象的だった部分を紹介していきたい。
凄まじき「文章の力」
中山七里さんの小説は面白い。
「ストーリー運びの巧みさ」が面白さの源泉なのだと思っていたが、ストーリーも何もない単なる日記でも、ここまで面白く読ませるのは「文章自体にも力がある」からなのだと思い知らされた。
「才能のない者は小説家を目指さない方がいい」と暗に訴え、常人離れしたプロット考案法や、殺人的なスケジュールを見せることでで生半可な挑戦者の心を折ってくるが、まだこの辺は「話を盛ってるんだろうな」と考えることもできる。
でも、この圧倒的な「文章の力」を目の前に示されると、さすがに「才能の差」を感じざるを得ない。心はバキバキに折れた。
作家刑事毒島
この日記には、中山さんの著作『作家刑事毒島』の話がよく出てくる。
承認欲求だけ強く行動の伴わない作家志望者や新人作家を徹底的に貶め陰湿にいびる内容で、罵詈雑言をエンタテイメントに高めた傑作だ。続編の『毒島刑事最後の事件』と並んで、私の好きな中山作品の一つ。
この本は「実際の話をベースにした」のだというが、さすがにそれは無いだろう。これが現実ならブラック過ぎだ。そのまま信じるほどピュアじゃない。とはいえ、いくばくかの真実は含まれているのだと思う。
まあ、酷い内容ではあるけれど、上述した才能の話も含め、これらは中山さんからの「とにかく行動しろ」という応援なのだ、とポジティブに受け取っておこう。
映画好き
中山さんのアウトプット量は凄まじいが、インプットも欠かしていない。めちゃくちゃ忙しそうなのに「マジですか!?」ってほど映画をみている。
「良質なアウトプットのためには、大量のインプットも欠かせない」ということなのだろう。忙しさを言い訳にせず、もっとインプットをする必要があるようだ。
ちなみに中山さんは「この世界の片隅に」をゴリゴリに推してる。心根が邪悪な印象のある中山さんだが、映画の好みが被っているのが嬉しくなりました。
「本」の文化を守ること
出版業界の窮状を憂う話も多い。図書館の姿勢や、文化にお金を払う意識の欠如を問題視している。本を愛する人間として全面的に同意したい。
ただ、個人的には悩みもある。
私は書店が大好きで、最新刊の情報や埋もれている名作を探すのが楽しいと感じてる。
でも狭い家には嵩張る紙の本の保管場所がなく、一方で電子書籍の便利さに馴染んでしまったので、ここ数年は買うのはほぼ100%がKindleになっている。
ちゃんとお金を払ってはいるので、作家さんや出版社には貢献できていると思うが、本の文化の一翼を担う「リアル書店」をショールーム扱いしてしまっていることに罪悪感を覚えているのだ。
リアル書店で電子書籍を買えるようにならないかなぁ。