人として軸がブレている
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ブレているからこそ面白い。
いや、ある意味、全然ブレてないけど。
感想
大槻ケンヂさんのエッセイ。
月刊「ムー」のオカルト記事、B級映画や格闘技など、サブカル寄りの話だったり、筋肉少女帯の再結成をはじめとした音楽業界の話だったり、大槻ケンヂ氏らしい、力の抜けた素晴らしいエッセイだった。
大槻ケンヂ氏は、役者、作家、タレントからロックンローラーまで、幅広い分野に首を突っ込んでいるし、主張している内容も結構周りを気にしてちょこちょこ変えている。そういう意味では「人として軸がブレている」のかもしれない。
ただ、自分が興味を持ったことを「徹底的に面白がってやろう」という好奇心や、ライブのお客さんや本の読者を「徹底的に面白がらせてやろう」というサービス精神はブレてない。
とても繊細な感性をもって世界を見ていることが分かるし、その一方では、周囲の人間も自分自身に対しても、醒めた客観的な目で観察しているのが面白い。例えば、清原選手の引退会見の描写が面白い。
清原選手が感極まって言葉をなくし長渕剛が「とんぼ」を歌っているシーンは、入り込んでしまえば感動的な情景だろう。それを
(前略)曲が長いのでなく以外どうすることもできず、ジャイアントロボのオープニングのごとくひたすら仁王立ち号泣を続け、その周りを武道のすり足に似たフットワークで長渕さんが歌いながら、ズザッ!ズザッ!と回っていく光景(後略)
と、一歩引いた視点で、面白がって見ている。
かつてタモリさんが言っていた「やる気のある者は去れ!」という言葉にも通じるが、自分が中に入り込んで熱くなってしまうと「面白さ」から離れてしまう。サブカル寄り脱力系の人たちの魅力は、その「力の抜け方」にこそあるのだな、と思う。
そういう意味では、大槻ケンヂ氏氏にはずっとブレ続けて欲しし、自分もブレ続けていたい。