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郵便配達人 花木瞳子が仰ぎ見る

郵便配達人 花木瞳子が仰ぎ見る

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「手紙には気持ちがこもっているんだ。

信頼が、愛が、想いが。

読んだ人は文字から気持ちを再生するんだよ。二人が共有したのは文字だけでも、それ以上のものがやり取りされている」

郵便配達人 花木瞳子シリーズ第2弾!

あらすじ

最大イベントである「年賀状」を控える年末、花木瞳子たちが働く郵便局に臨時アルバイトが入ってくる。アルバイトに応募してきたのは真面目な雰囲気の女子高生が多かったが、瞳子は一人20代後半で不愛想な水野宗一とペアになった。

その頃、手紙から謎を解く「手紙探偵」を自任している森谷禎司郎のもとに「親指泥棒」と名乗る人物から挑戦状が届く。手紙に書かれた通り河原に親指を切断された死体が発見された。森谷は事件を調査している刑事たちに取り入り情報を引き出していく。

瞳子は、他の女子高生バイトと衝突したりして職場で打ち解けられない水野を、おでん屋「さなえ」に誘う。さなえの店主で、瞳子の元上司である持丸は10月ごろから行方不明となっており、彼の妻である早苗も、郵便局員一同も心配していた。

第二の犯行を告げる親指泥棒からの手紙が森谷の元に届き、予告通り2人目の親指のない死体が発見される。手紙には「3人目の死体は森谷だ」と予告されていた。

水野は郵便物に関するコレクターで、同じ趣味を持つ森谷とも交流があった。瞳子は偶然2人がオフ会で会っている現場に居合わせ、話を聞いた。

2人が熱心に収集しているのは「クラッシュカバー」と呼ばれる「事故による遅配郵便物」だった。「よど号事件」の影響で配達が遅れた身元調査や、青函連絡船の事故で残された手紙など、背景にあるドラマを感じさせるのが魅力だという。

とはいえ、森谷と水野はお互いに信頼していなかった。水野は瞳子に「森谷が危険人物だと思っている」と告げ、森谷は水野が集めているクラッシュカバーに「死の匂いがする」ことを瞳子に伝えた。

年賀状配達を翌日に控えた大晦日の深夜、瞳子は水野に指定された場所に赴き、水野の過去に犯した罪の告白を聞く。

感想・考察

手紙に書かれた文面だけでは思いは伝わり切らない。手紙が書かれた背景や当事者同士の関係性によっては文章は意味を変えていく。

郵便配達人シリーズでは手紙が鍵となり、「表面的なメッセージ」と「当事者同士だけが理解できる意味」の違いが、ミステリ上のポイントにしている。

驚きを演出する効果もあるが、「他人を完全に理解することはできない。でもそれでも、諦めずに伝えようとすること、理解しようとすること」が信頼を生むというメッセージも伝わってくる。

なかなかの力作だ。

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