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18禁日記

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あらすじ

日記や手紙、遺書などを通して人の狂気を描き出す連作短編集。

  • Sの日記

作品の導入としての日記紹介。

  • Nの告白

満たされているからこそ「奪う」感覚を味わいたかったNの遺書。
理解されない「理」を語る。

  • Dの日記

就職活動に苦戦するDの日記。プロフィールを「盛って」いく中で自分を見失っていく。

  • Fの日記

蚊に刺された痒みと戦うFの日記。
やがて苦しさの中から快感を見出していく変態。

  • Eの日記

早く処女を捨てたかったEの日記。
自分の欲望に忠実な行動が彼氏を傷つける。

  • Zのブログ

自作の詩を紹介していたZのブログ。
荒らしとの戦いが生々しい。

  • Lの日記

医大に合格したLの日記。
解剖実習を重ねるうち、肉体がモノに見えてくる。

  • Rの詩集

ブスを自覚していたRの詩集。
急に自信を持ち始め、彼女持ちの男性社員に迫っていく。

  • Bの遺書

絶対音感に悩まされるBの遺書。
すべての音に音階を感じ、すべての音階に意味を感じてしまう。

  • Tの日記

水晶体の不思議に心奪われた小学生Tの日記。
小さな興味が抑えられない衝動に育っていく。

  • Mの日記

匂いフェチMの日記。
自分自身の匂いに安心感を覚える。

  • Cの夢日記

少年Cの夢の記録。
家族の出てくる夢、身体の一部が欠損する夢、何かに追われる夢が多い。

  • Pの日記

「自由意思」の存在に疑問を覚えたPの日記。
すべては周囲の状況に規定され、脳に操られている。

  • Uの送信メールボックス

彼女と付き合い、徐々に関係が崩壊していくUが送った80通のメール。
優しく常識的な彼氏がストーカー化する怖さ。

感想

最初はまともに見えた日記が徐々に狂気を孕んでいくのが怖い。

個人的に気に入ったのは「Fの日記」と「Zのブログ」だ。

「Fの日記」は、虫刺されの痒みの話で、テーマ自体にホラー要素はない。最初は常識的な対応をしているが、徐々に偏執的な狂気にはまっていく。怖いのは「普通」と「狂気」の境目が見えず、ごくごく自然に移行しているところだ。
「狂気の入り口はいたるところに開かれている」という恐ろしさを感じる。


「Zのブログ」は、前半はブログ主の「痛々しさ」全開で読んでいて辛くなる、むしろコメディー的な展開だ。
後半に入って物語は急に方向を変えていくのだが、それでも変わらないブログ主の「痛々しいノリ」が、かえって空々しい不気味さを醸し出す。
割と複雑なプロットだけれど「地の文」はなく、ブログ記事だけで表現することで、乾いた恐ろしさも表現している。

サラッとした文章で、人を引き込んでいく筆力はすさまじいと思う。
やはりすごい作家さんだ。

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