占い処・陽仙堂の統計科学
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万物は変化する。
日は昇り、沈む。海は満ち、引く。人は死に、生まれる。
世界の何一つとして変化せずにいられるものはない。
そんな変化する世界の中でも変わらないもの、
それはまさに変化そのものだ。
変化は止まらない。変化こそが不変なり。
あらすじ
行方不明になった妹の蓬莱晴菜を探す蓬莱喜一は、四柱推命占いの名手である ヨーセンの噂を聞き、ブログの情報から彼女の正体を探り当てる。
四柱推命を統計学として科学的に捉えようとするヨーセンと、占いに胡散臭さも感じている喜一は当初ぶつかり合うが、実際に占ってもらいヨーセンの実力を知った喜一は、妹探しを依頼する。
ところが、ヨーセンは四柱推命を読み解くことに集中しすぎ、喜一の反応を見ず傲慢な態度をとってしまう。一緒にいた友人にも嫌われ、ヨーセンは自信を失った。
喜一は晴菜を父から守ろうとしていた。
父は、かつて晴菜に歪んだ愛情を持ち彼女に襲い掛かった。そのとき父は母親を刺し殺し、その罪で刑務所に入っていたが、あと数日で刑期を終える。喜一はそれまでに晴菜の居場所を把握し、守りたいと考えていた。
ヨーセンは、四柱推命だけでの探索に限界を感じ、自分とは対極的で感覚派の占い師であるレナにも意見を求めたが、彼女は「晴菜はもう死んでいる」と言う。
感想・考察
四柱推命は統計学であるという。
古代中国での「戸籍制度」というビッグデータを元に、長い時間をかけて読み解かれたデータサイエンスだという捉え方だ。
確かに多くの占いに統計学としての側面があると思う。
たとえば「4月生まれは3月生まれと比べてリーダーになりやすい」というのは、日本の就学時期を考えれば、合理的な根拠があると思える。
仮に 3歳で幼稚園に入るのであれば、4月生まれは3月生まれより25%くらい人生経験が長いことになり、大きな差になる。大人にとっての一年とは意味合いが異なる。それだけ条件が違うと、4月生まれの方がリーダー地位を占めやすいということはあり得るだろうし、初めて社会参加した時期の立場が将来に影響を与える可能性も十分あるだろう。
相関関係が見えにくいだけで、名前や血液型にも、人物の性向と関係があるのかもしれない。ビッグデータとして解析すれば何かが見えてくる可能性はあるだろう。
ただ、そのように統計学と考えると環境変数の影響が大きい。千年以上前に確立した四柱推命は、もっと柔軟に解釈されなければならないのだろう。
例えば上記の例で、4月生まれと3月生まれの差を分析するにしても、数千年前の中国にはなかった現代日本の学校制度が大きな影響を及ぼしている。
そうやって細かい変数を何層にも組み込んでいくと、初期条件の小さな違いが大きく発散してしまう。細かい事柄の性格な予測を統計学的に追及するのには限界があり、「傾向」を捉えるのが精いっぱいということなのかもしれない。
一方で、星座から「今日のラッキーアイテムはブルベリーフラペチーノ!」とするような個別具体的な占いは、おそらく統計学的な手法で導かれたのではないだろう。それでも、それが受け手の行動に影響を与えるのであれば、コンサルテーション的な意義はある。
そうやって行動変容を促すことが「占い」の本当の意味なのかもしれない。
12年に一度のラッキー月なのに、外出自粛で引きこもりながら、 占いについて考えてみた。。。