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キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~

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あらすじ

『キネマ探偵カレイドミステリー』シリーズ第2弾。
映画好きの引きこもり嗄井戸と、その友人奈緒崎が映画にちなんだ事件を解決していく、3つの連絡短編集。

  • 「再演奇縁のオーバーラップ」(スタンド・バイ・ミー)

奈緒崎が大学内を歩いていると、同級生の能見が大きなカバンを持ち不審な振る舞いをしていた。声をかけると「しばらく泊めて欲しい」という。

能見が住んでいるアパートの大家は亡くなった奥さんとの思い出がつまった「スタンドバイミー」を大事にしていたが、窓ガラスを割って侵入した何者かに盗まれてしまう。その直後、能見の部屋にスタンドバイミーのDVDが投げ込まれていたため、説明に窮して逃げ出してきたのだという。

だが数日後能見は「もういいんだ」といって奈緒崎の部屋を出ていった。

嗄井戸は奈緒崎の話から、スタンドバイミー盗難の真相を解き明かしていく。

  • 「自縄自縛のパステルステップ」(アーティスト)

奈緒崎は、高校生の「フリーエージェント」矢端束に誘われ演劇を鑑賞した。終焉後、主演女優の荒園杏子が不可思議な事件の調査を依頼してきた。

杏子の家の白い敷石にピンクの足跡が残っていて、黒い敷石の玄関の前でペンキで塗れた靴を脱いでいた。玄関には舞台監督である這場和彦のメッセージカード付きの靴が置かれていたという。
這場は公開中の演劇の舞台監督であるにもかかわらず、初日から行方をくらましていた。
杏子は自分を引き上げスターにしてくれた這場を尊敬しつつ、監督としての責任を放り投げたことには怒りを感じてもいた。

奈緒崎と束は、嗄井戸に状況を説明し、事件の真相を見抜いていった。

  • 「正誤判定のトレジャーハント」(バグダッド・カフェ)

奈緒崎は、旧友の菊池がバイト先の中古ビデオ屋で、理不尽なクレームを受けている現場に居合わせた。
「一度買い取った映画のDVDに、もっと価値があるはずだから再査定しろ」といい、査定可能な店主が不在であっても待てないと言い張る。

奈緒崎は菊池を助けるため、嗄井戸に買取品のリストを見てもらったが、そこで彼は「あり得ないはずのDVD」を見つける。

感想

本作は、嗄井戸と奈緒崎、束たちの絡みが楽しい。
頭が切れてクールなのに子供っぽい嗄井戸はなんか可愛い。

各話の謎も面白いが、1作目から全体を通して語られている「嗄井戸の姉の惨殺事件」が、はっきり動き出す最終話は結構衝撃的で、シリーズ最終巻となる3作目が気になってしまった。

ちなみに各話に登場する映画は、どれも好きな作品だった。
でも「スタンドバイミー」だけは、自分には正直面白くない。
「もう戻れないあの頃」へのノスタルジーが描かれているのはよく分かる。
人は変わり続けるし、変化の多くは不可逆だ。

そういうノスタルジーに切迫した実感を感じられないのは、自分はこの年になってもまだ子供だということなのだろうか。
日々「昨日よりは良くなっている」と感じているから、過去への郷愁が薄いのだろうか。

このノスタルジーを実感できる日がくることが楽しみでもあり、永遠に来なければいいと思いもしている。

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