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催眠ガール

催眠ガール

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あらすじ

ミルトン・エリクソンの催眠導入技術を、高校2年生の夏目明日香の物語にのせて紹介する。

明日香は両親の愛情を受けずに育ってきた。
母は亡くなった明日香の兄への思いが強く、彼女を疎ましく思いつらく当たっていた。父親も常に不機嫌で明日香を受け入れようとしない。

常に自分を抑えていた明日香は学校でも地味な存在だった。
部活も続かず、勉強もできずテストでは赤点続きだった。

テストでビリ争いをしている沙知、美人だが彼氏に振り回されている由衣、優等生の亜美 たちの友達はいたが、遠慮がちで踏み込むことはできずにいた。

ある日、明日香は通学の電車の中で「さえないおっさん」が、鮮やかにケンカをいさめるのを目撃した。
そのおっさんが催眠療法のカウンセラーであることを知った明日香は、彼をお師匠さんとして弟子入りを申し出る。師匠は明日香を事務所の受付担当として受け入れ講義を聴かせた。

明日香が最初に身につけたのは「呼吸を合わせる」ことだった。
呼吸を合わせることで相手とシンクロする。
呼吸を読むのは難しいので、実際には肩やお腹の動きに全集中し合わせていく。

明日香は、教師の呼吸にシンクロすることで、授業に集中することができるようになる。また、呼吸に全集中することで、湧き上がるネガティブ感情を忘れ、勉強に専念することができるようにもなった。

もう一つ、明日香が学んだのは「スクリプト」の技術。
物語を作って相手に聞かせ催眠状態に入れていく。物語の中にメタファーを練り込んで、効果を発揮させるのだという。
明日香は、師匠のスクリプトを聞きその効果をゆっくりと体感していった。

呼吸法とスクリプトの影響で勉強に集中できるようになった明日香の成績は急上昇していった。一方、いつも明日香とビリ争いをしていた沙知は一人取り残され、進級が危ぶまれるほど厳しい状況に追い込まれた。
明日香は沙知のためのスクリプトを書き、彼女を救っていった。

また、いつも彼氏に振り回されている友人由衣のためにもスクリプトを書き、彼女も少しずつ変わっていった。

明日香の催眠の話を聞いた亜美は、自分がマネージャをなっている相撲部のため、催眠の技術を使って欲しいと依頼してきた。
明日香は相撲部員たちに「呼吸を合わせる」ことを教えた。相手の動きを読むことができるようになった部員たちは、急成長し地区大会で優勝するまでになった。
クラス内にも催眠のうわさは広がり、クラスメートたちも「教師の呼吸」に合わせ集中力を高めていった。

明日香の催眠の噂を聞いた PTA役員は「あやしげな洗脳でズルをしている」といって明日香を糾弾した。
明日香は追い詰められ動揺したが、最後は落ち着いて対応し、衝突を乗り越えていった。

最後に明日香は、ずっと乗り越えられずにきた「母親との確執」と向き合っていく。

感想

ミルトン・エリクソンの理論をアレンジした催眠療法を、物語仕立てで紹介する話。

宗教的な個人崇拝っぽさに、若干引いたが、元ネタとなっているミルトン・エリクソンの催眠誘導のアプローチは面白そうだ。催眠は便利な超能力ではないけれど、カウンセリング手法としては有益なのだろう。コーチングなどにも応用できるかもしれない。

ミルトン・エリクソンのアプローチは以下のようなものだ。

・人は自由を侵害されることを無意識に拒む。
 催眠状態でも、被催眠性の高い人を除いて、自分と異なる意見は排除する。

・まずは相手を許容し、関心を持って相手を観察する。

・相手の情報を利用し、相手の内部にあるリソースを使って問題を解決させる。
 外部から答えを教えるのではなく、相手の内側にある体験を喚起して、自分の価値観や信念、主義主張を自ら見つけ出していくことを助ける。

明日香が使う「呼吸法」も、元ネタはミルトン・エリクソンの主張する「ミラーリング、クロス・ミラーリングやペーシング」にあるのだろう。
支障が相手の行動を口に出して説明するのも「描写的マッチング」を意識しているのだろう。

本書に色々な仕掛けをしているのだろう。私のように「宗教臭くて胡散臭い」という反応をする人がいることも、あらかじめストーリーに組み込んでいる周到さも感じる。

でもどうしても引っ掛かりを感じて、素直に入ってこなかった。






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