涼宮ハルヒの驚愕(前)
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あらすじ
涼宮ハルヒシリーズ第10弾。
前作『涼宮ハルヒの分裂』から始まる三部作の中編となる。
前作で α と β に分岐したまま、本作でも二つのストーリーが並行して進む。
作中ではαとβが交互に展開されるが、それぞれの軸でまとめてみる。
α(アルファ)の世界線
・前作まで
春休み最終日、キョンが中学時代の親友佐々木と再会してから、ハルヒの精神が不安定になる。
ある夜の入浴中「あたしはわたぁし」と名乗る正体不明の電話を受けてから世界が分岐した。
それ以後、佐々木の知り合いたちと出会うこともなく平和な日々を過ごす。
SOS団への新入生勧誘は盛況で、多数の入団希望者が訪れてきた。
・α-7
月曜日。
キョンは普段通りに登校する。
特筆すべきことの無い平和な一日。
・α-8
火曜日。
古泉は、ハルヒの精神が安定し「閉鎖空間」の出現が無くなったという。
SOS団では新入生の入団希望者への選抜試験を実施した。
・α-9
水曜日。
ハルヒは団員選抜試験として「マラソン」を実施する。
驚異的な体力でハルヒについてきた「渡橋秦水(わたはし・やすみ)」の入団を認めることになる。
キョンは先週の入浴中にかかってきた「あたしはわたぁし」という電話が「私は渡橋」だったと気付く。
β(ベータ)の世界線
・前作まで
ある夜の入浴中、佐々木からの電話を受けてから世界が分岐した。
キョンは佐々木の知り合いと再度会う。
古泉と競合する機関の人間である橘京子、宇宙人の周防九曜、未来人の藤原は「不安定な涼宮ハルヒから、安定している佐々木にその能力を移そうとしている」のだという。
SOS団の入団希望者は一人もいなかった。
・β-7
月曜日。
放課後、SOS団は体調を崩し休んでいた長門の見舞いに行く。
長門は宇宙人九曜の干渉を受けて消耗しているのだという。
買い出しに出かけたキョンに九曜が接触する。そこに朝倉も現れ再びキョンの命を狙ったが、さらに喜緑も登場し事態をおさめた。
・β-8
火曜日。
ハルヒたちは再び長門の見舞いに向かう。
その間にキョンは佐々木たちと会い話をした。
藤原は「ハルヒの能力を佐々木に移す」ことを強硬に主張し、長門を元の状態に戻すことを交換条件とした。
キョンは長門を助けたいと思いつつ、藤原のやり口は気に食わなかった。
また佐々木自身も「能力を受け継ぎたいとは思わない」と主張した。
だが、藤原は「決定権はこちらにある」として取り合わなかった。
・β-9
水曜日。
古泉は「決定する力はキョンにある」という。
自宅に帰ると佐々木が来ていて「不本意に流されない。言葉の力でネジフセル」のだという。
感想
並行世界のSF的展開が面白い。
「どうなっているの?」という謎が大量に投げかけられるので、最後どのようにまとめてくるのか楽しみだ。
三部作最後となる『涼宮ハルヒの驚愕(後)』に期待大。
前作から登場している新キャラ面白い。
特に「佐々木」が魅力的だ。
印象に残ったのは
「おのおのが、自分たちが確かに存在しており、他の誰かもまた自分自身の存在を認識してくれている、という唯一にしてシンプルな行動理念によって動いているんじゃないかな」というセリフや、
「正直言うと僕が産出し、育てた何かを後の世に残したい。DNA以外でね」というセリフ。
前者は「物語世界の登場人物」視点の言葉で、後者は「物語の作者」の視点からの言葉のようだ。
物語を外世界から俯瞰したメタ視点を感じさせる。
本シリーズ第1作で、ハルヒは
「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」
という印象的な言葉を残している。
物語の中で、宇宙人・未来人・超能力者は登場しているが「異世界人」だけは出てきていない。
「物語とは別世界にいる『作者』もしくは『その語り手としてのキョン』が「異世界人」というオチかな」と考えている。
今回の佐々木のように「メタ視点」を感じる発言もちょこちょこあるし。
とにかく次回作が楽しみだ。