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涼宮ハルヒの驚愕(後)

ネタバレあり『涼宮ハルヒの驚愕(後)』

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あらすじ

涼宮ハルヒシリーズ第11弾。
『涼宮ハルヒの分裂』から続く三部作の完結編。

αとβの二つに分かれたていた物語が一つに収束する。

αの世界線
・前作までの状況
ある夜、キョンの入浴中に「あたしはわたぁし」という正体不明の女子からの電話を受けてから世界が分裂する。

キョンは中学時代の親友、佐々木と再会したが、その後特にアプローチもなく、平穏な日々が続く。

SOS団には新1年生の入団希望者が殺到した。試験の結果、ハルヒど同等のエネルギーを持つ「渡橋秦水(わたはし・やすみ)」が、新規団員として加入することになった。

・α10
木曜日。
SOS団に入った ヤスミは、SOS団サイトページの刷新などで能力を発揮し、その素直な可愛らしさで、朝日奈の心もつかんでいった。
古泉はキャッチボールをしながら、キョンとハルヒの関係を煽っていく。

その夜、ヤスミがキョンの家を訪れ「よろしく」と伝え帰ってていく。

・α11

金曜日。
キョンは「放課後の部室で会いたい」という手紙でヤスミに呼び出される。

昼休みにキョンは1年生の校舎でヤスミを探すが見つからない。ヤスミはこの高校の生徒ではなかった。

放課後、SOS団の活動終了後、キョンは再び部室に戻りヤスミに会いに行く。

・α12~α14

キョンがヤスミと一緒に部室で待っていると、3人の訪問者が訪れた。
キョンは、橘京子、藤原と、もうひとりのキョンと会う。

βの世界線
・前作までの状況
ある夜、キョンは入浴中に「佐々木」からの電話を受け、世界が分裂する。

佐々木に知人を紹介される。
古泉と競合する組織に属する 橘京子、宇宙人の周防九曜、未来人の藤原は、涼宮ハルヒが持つ「世界創造の力」を、より安定運用できる佐々木に移したいと考えていた。

佐々木本人は望まないにもかかわらず、藤原たちは計画を強行していく。
九曜の干渉で長門は力を失い衰弱していった。

SOS団には新入生の入団希望者は来なかった。

・β10
木曜日。
放課後にキョンが部室に行くと、β世界にはいないはずのヤスミがいた。
彼女は「間違えて来てしまった」のだという。

その後、佐々木は電話で「キョンを信頼している。任せる」と伝えた。

・β11

金曜日。
キョンは放課後、佐々木、周防、橘、藤原と待ち合わせた。
全員で再び高校に戻ったが、校門を入ったところで「キョン、橘、藤原」の3人だけが、佐々木の「閉鎖空間」に閉じ込められた。

3人は「閉鎖空間」の中の校舎に入り、SOS団の部室に向かう。


・β12~β14

部室に入ったキョンは、そこにいた2人と会う。
前日に会ったヤスミと、もう一人のキョンだった。

統合された世界
ヤスミに導かれ手を重ねた二人のキョンの記憶は重なり合い、二つの世界は合流した。

佐々木の「閉鎖空間」に、ハルヒの「閉鎖空間」が重なった。
九曜、古泉と朝日奈(大人)もその場に合流した。

藤原は、朝日奈を姉と呼び「彼女が失われる世界線」を書き換えようとしているのだという。

藤原は九曜に命じ、意識を失ったハルヒを高所から落として殺し、その能力を強制的に佐々木に移そうとした。

キョンは窓から飛び出し、ハルヒを助けようとする。
地面に激突する寸前、ハルヒ閉鎖空間の『神人』が現れ二人を救った。

その後、キョンは時間移動を経験する。
大学のキャンパスにいるハルヒと出会い、数年後も一緒にいる姿を確認する。
次に「今」から一か月後の世界に飛び、ハルヒに「SOS団結成1周年」のサプライズ・プレゼントを渡す役を担う。

「今」に戻ったキョンは、ここ数日で起きたことを理解し、未来への決意を新たにした。

感想

主流派の多元宇宙論では世界は無限に分裂し増えていくと捉えている。
本作の世界観では、世界は「分裂しようとする力」と「合流しようとする力」が併存し、分裂と統合を繰り返しているのだとしている。

熱力学におけるエントロピー増大法則にしても、多元宇宙論における世界の分岐にしても、放置すれば世界は「混沌」に向かう。

「混沌」に立ち向かう奇跡が「意志」のエネルギーなのだろう。
放っておけば「混沌」に向かうはずの世界に「こうしたい」という思いを投げかける。
近くにいると迷惑でもなぜか惹かれてしまう「意志」の強さ。涼宮ハルヒの魅力はそこにあるのだろう。


『涼宮ハルヒの消失』では、意思を持たないはずの長門有希が、思いを持ち始めた。ゼロからイチが生まれる、切ないけれど力強い話だった。

今回の『涼宮ハルヒの分裂・驚愕』三部作では、圧倒的な意志の力をもった涼宮ハルヒを描く話だ。これもまた切なく美しい。

シリーズを通して読んでみて、「売れるモノには相応の魅力がある」ことが分かった。
最新刊は Kindle Unlimitedなので、焦る必要はない。
いつかゆっくり読んでみよう。

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