知性を磨く~「スーパージェネラリスト」の時代~
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要約
さまざまな分野で専門化、分業化が進み、客観的であることを意識するあまり、「知性」の修養が妨げられているとし、垂直統合された「スーパージェネラリスト」となることを提唱している。
- 知性とは
「知性」とは「答えのない問いを問い続ける力」だ。
一方「知能」は「答えのある問いに早く正しく答える能力」で、学校教育で重視されている。
「答えのない問い」に「知能」で対応すると「割り切り」が生じる。とにかく答えを出して、分からない部分は切り捨てる。これは心が楽をしようとしているだけで「割り切りとは、魂の弱さである」という。
分からない部分があっても「これで行こう!」と能動的に意思決定し「腹を決める」ことで、継続的に問い続けることになり「知性」が磨かれる。
また「知識」も「知性」とは異なる。
「知性」の本質は「知識」ではなく「智慧」で「言葉では表すことができず、経験からしか学べないもの」だ。
頭の良い人が知性を高められないのは「知識」が「知性」であると勘違いすることが一因。
「高度な専門性」と「高度な知性」も混同される。
昨今では個別分野の「専門の知性」だけでは解決できない学際的問題が課題となっていて、専門の知性の垣根を超える「水平統合の知性」を持った人材が求められている。
さらに著者は、専門の垣根を水平的にまたぐのではなく、課題解決までを垂直的に統合する「垂直統合型の知性」をもった人材が必要だとし、その人材を「スーパージェネラリスト」と呼んでいる。
- 垂直統合のための「7つの思考レベル」
垂直統合の思考には7つのレベルがあり、これを並行して進めながら統合することが求められる。
①思想
例:環境汚染問題として「土壌汚染」が着目されていくだろう。
予測できない未来を「予見」する能力。
個別事象は見えなくても大局観を掴む。「弁証法的」な見方、「複雑系」を意識下捉え方などを提唱している。
②ビジョン
例:「土壌汚染」解決には土壌浄化技術が不可欠。○○億円の市場が生まれる。
ビジョンは「これから何が起こるか」の客観的思考。
主観的願望である「企業理念」や、意思的目標である「事業計画」とは異なる。
③志
例:社会問題解決に貢献するため「環境浄化産業」を創出する。
ヴィジョンをもとに「この未来を目指そう」という明確な意思が「志」。
単に理想を描く「思い」とは異なる。
④戦略
例:ゼネコン・エンジニアリング会社のコンソーシアムを結成する。
「戦略」とは「戦いを略く(はぶく)」こと。
無用な戦いを避けて目的を達成することに価値を置く。
⑤戦術
:A社、B社、C社に参画してもらおう。
「戦略」を具体的施策に落とし込んでいく「戦術」レベルでは「想像力」が大切。具体的なシミュレーションのためには「固有名詞」レベルでの思考が必須。
⑥技術
例:各社説得のための企画書作成スキル、交渉スキルが必要。
スキル、センス、テクニック、ノウハウと呼ばれる能力が「技術」
本を読んで学べる「知識」ではなく、経験に裏打ちされた「智慧」が、「技術」の本質。
⑦人間力
例:A社のDさんの協力を得るため人間的な信頼が必要。
人間力を高めるためには「心の動き」を感じ取る修行が必要。
まず最初に「自分の心の動き」を知り、そこを足掛かりに「相手の心」「集団の心」を掴んでいく。
- 多重人格のマネジメント
レベル異なる知性を一人の人間の中で垂直統合するために、複数の人格を持ち、メタ的に俯瞰してマネジメントしてくことを提言している。
「多重人格」が「多彩な才能」を開花させるのは、「無意識な自己限定」から解放されるからだとする。
感想
「マーケティングのテキストブックから出てきたような」人物というのがいる。
話は流暢だし分かりやすいけれど、なぜか心が動かされない。
著者のいう通り
専門化による「知と知」の分断、
分業化による「知と行」の分断、
客観的であろうとする姿勢が生む「知と情」の分断、
が「知性」を軽くしてしまっている。
心に響かず相手を動かすことができない。
以前、堀江貴文氏が「寿司の技術は数週間で学べる、〇〇年経ってようやく包丁を握れるような修行は非効率」といっていた話を思い出した。
当初は「ホリエモンの意見は浅いなー」と感じていたが、本書を読んで印象が変わった。
堀江氏が言っているのは「知識や知恵のレベルで時間をかけるのは、技術の発達した今日では非効率」という話であって、その先に経験を積んで「智慧」や「技術」を向上させていくことを否定しているわけではない。
「浅いな」と思っていた私自身、どれだけ主体的に「経験を智慧や技術に活かしていこう」としていたかを考えると恥ずかしい限りだ。
「知性」とは「答えのない問いを問い続けていく力」
主体的な取組みが必要だ。
精神的なスタミナを高めていこう。