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LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

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要約

「人生100年時代」、人の寿命が長くなってきている。
働き方や、人間関係の考え方を変えていくことを提唱する。

人生100年時代の実現

・平均寿命の長期化
平均寿命は長期化している。

100年前に生まれた人が、100歳まで生きる可能性は1%程度だった。だが、2007年に先進国で生まれた子供が、100歳まで生きる可能性は、50%を超えている。

発展途上の国の平均寿命は、先進国より短いが、それでもほとんどの地域で長くなる傾向にあり、長期的には追いつくものと考えられる。

単に生きている時間が長くなっただけではなく、慢性疾患の発症年齢も遅くなる傾向があり「健康寿命」が長くなってきている。

著者は今後さらに寿命が伸びる余地があるとみている。

出生年代ごとのモデルケース

・世代別資金計画の変化-1945年生まれのケース
1945年生まれのケースでは、人生が「教育」「仕事」「老後」の3ステージで構成されている。

教育期間と仕事期間の初期に身に付けた知識や技能で、「仕事」の期間を乗り切る。

公的年金や企業年金は、まだギリギリ機能している。平均寿命が70歳程度と短いこともって、60歳前後の定年まで働き、年収の4%を貯蓄していれば、最終所得の50%程度で生活することが可能。

また家庭では、男性が稼ぎ頭として外で働き、女性は家事や育児を主とするという分業が一般的。

・世代別資金計画の変化-1971年生まれのケース
1971年生まれのケースでは、従来の3ステージを前提とした仕組の中で生きながら、それが機能しなくなる状況に直面する。

平均寿命は85歳と長くなる一方で、企業年金はほぼなくなり、公的年金も縮小していく。

65歳で定年する場合、引退後最終所得の50%で生活するためには、就労期間中にずっと 17.2%を、老後資金として貯蓄に回す必要があり、実際にはほぼ不可能なレベル。

定年を迎える前から準備を進め、ポートフォリオ型(いくつかの仕事を行う)や、インディペンデント型(自ら起業)の働き方で、75歳くらいまでは継続収入を得る必要がある。

従来の3ステージに追加する3.5ステージか4ステージでの生き方となる。

・世代別資金計画の変化-1998年生まれのケース
1998年生まれのケースでは、100年以上は生きる可能性が高い。

仮に65歳で引退しようと思うと、最終所得の50%で生活するためには、就労期間を通して25%を貯蓄に回す必要があり、実行不可能。必然的に就労期間が長くなる。

同時に技術革新のスピードも上がるため「学び直し再投資する期間」や「変身のための活力や外部ネットワークを醸成する期間」も必要となり、より複雑な人生設計が必要となる。

またそういった「収入のない期間」を支え合う、パートナー同士の信頼感や、高度なすり合わせ能力が、必要となってくる。

・雇用の未来
産業は新陳代謝している。

AIやロボティクスの発達で、機械に置き換えるのが困難な業務や、機械より人間の方が低コストな業務を除く「中程度のスキルを求められる仕事」が、手始めに置き換えられている。

置き換えられる業務の幅は、今後さらに上下に広がっていくものと予想される。

「人生100年時代」に必要な資産

・見えない資産-生産性資産
長い人生を豊かに過ごすためには、金銭などの「有形資産」だけではなく、目には見えない「無形資産」のマネジメントも重要。

「生産性資産」は仕事のための知識や技能。

3ステージ型であれば、教育期間と仕事期間の初期に積上げた「生産性資産」で就労期間を乗り切れたが、就労期間が長期化し、技術革新も進む中では、途中であらためて「生産性資産」の充実に、資源を振り向ける必要がある。

・見えない資産-活力資産
「活力資産」は心身の健康や、家族・友人との良好な関係。

就労期間が長期化し、60年に渡って全力疾走すれば、心身の健康を害し、活力を失ってしまう。

その間、家族や友人をおざなりにすれば、幸せの根拠が失われてしまう。

人生の長期化に応じ、従来より意識して、資源を振り分ける必要が生じている。

・見えない資産-変身資産
人生での変化に耐えるための力。

何度かステージを変える必要が生まれる分、「移り変わる人生の中で変わらないものは何か」を見極め、自分の軸となるアイデンティティーを確立することが必要となる。

また「多様性のある外部ネットワーク」も、違う世界に移るために重要な資産だ。

新しい「人生のステージ」

・新しいステージ-エクスプローラー

従来の3ステージでの人生設計では、人は「一斉に同じような人生」を歩んだ。

だが、画一的な基準がなく、より複雑なステージを生きる時代には「周囲の世界を知り、自分が好きで得意なこと」を探すことが求められる。

日常から切り離された「エクスプローラー」としてのステージが、必要になる。

・新しいステージ-インディペンデント・プロデューサー
永続的な起業ではなく、プロトタイピングによる試行錯誤を繰り返しながら「組織に雇われず、独立した立場で生産に携わる」ステージ。

金銭的なマイナスを最小限に止めながら、生産性資産と活力資産を支えるために有効。

・新しいステージ-ポートフォリオ・ワーカー
「支出をまかなうための仕事」「過去の経験を活かし、スキルと維持できる仕事」「新しい学びを得て、やりがいを感じられる仕事」を、上手く組み合わせていく。

長期間を乗り切るには「選択肢を維持すること」が有効。

「考え方」の変化

・お金の考え方
長い人生ではお金の問題への取組みが不可欠。

人は目先のものに流される傾向がある。長期計画を立て実行するためには、
自己効力感-自分は成果を出せるという感覚
自己主体感-未来の自分も自分という感覚
が必要となる。

・時間の使い方
楽しみとしてのリクリエーションだけでなく、自己再生のための「 リ・クリエーション」に投資することが必要となる。

・未来の人間関係
「男性は有形資産の獲得を目指し、無形資産の維持向上は女性が担う」という分業は、成り立たなくなってきている。

人生のステージを何度も変えていく中で、収入のない期間が生じるため、パートナー同士で支えあうことが必要となる。

そのためには深い信頼関係と、コミュニケーション能力が欠かせない。

また、人生の長期化で「子育て」が占める割合が、相対的には減ってきており、家族以外の関係も、重要性が増してきている。

さらに「教育・仕事・老後」の3ステージ構成では、年齢とステージが連動していたが、3ステージ構成が解体され、年齢とステージが入り組んでくる。

若者と高齢者が、一緒に学んだりする場面が増えれば、相互理解が進んでいくことが期待できる。

それぞれの課題

・変革への課題-自己意識 
多くのステージを経験する変化の激しい人生では、その軸となる「アイデンティティー」の確立が欠かせない。

・変革への課題-教育機関
「人生の各ステージで学びが必要となる」という考え方で、教育機関も変わる必要がある。

・変革への課題-企業
企業側は「画一的で予測可能なシステム維持」を望むが、優秀な人材の維持のためには変わる必要がある。

・変革への課題-政府
長寿命化に対応した財政制度の見直しが緊急課題。
また寿命・健康寿命と収入に相関関係があるため低収入層への支援も不可欠。

感想

最近生まれた世代はすでに「人生100年時代」に突入しているのだろう。
健康寿命も確実に伸びてきている。

人生が60〜70年だった時代にできあがった「学習・仕事・労働」の3ステージの考え方が機能しないというのは理解できる。
本書著者はイギリス人だが、状況は日本でもほとんど同じだ。

もちろん「3ステージ」の考えが生まれた根拠は、人の寿命だけではない。

産業革命から資本主義が発達した時代に「3ステージ」構成の「都合が良かった」という面もある。それぞれの地域での、文化的歴史的な背景もあったのだろう。

だから「人生100年時代」に対応するためには、「長寿」だけでなく「産業構造の変化」にも焦点を当てる必要があるのだと思う。

本書の趣旨は
「長く生きるのだから、長期間快適に働ける体制を整えよう!」ということだ。

でも、私の個人的な願いは
「歳とってまで、働かなくてもよくなるといいなぁ」だ。

「働くこと=他人への価値貢献」にこそ生きる意義を感じる、という人であれば、長く健康に働けるのが良いのだろう。

一方で、「そんなにずっと働きたくない」という「消費志向」の生き方も、受容できる社会であって欲しいと願う。

AIやロボティクスは「人間の仕事を奪う」のではなく「人間の仕事を肩代わり」してくれるものだ。人の手をかけずに「富を産出」することができるのであれば、素晴らしいことだ。

一方で、現実として高齢化は人口減少に繋がっていて、パイを取り合う分母は減っている。

社会の生み出す富が、社会全体の必要量を超えるのであれば「労働による他者への価値貢献」だけを「富の分配の基準」にする必要はない。

以上「生粋の怠け者」の戯言でした。

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