ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった
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要約
ESG(Environment, Social, Governance)思考が、経済をどのように変えていくかを解説する。
著者は「環境・社会への配慮が企業利益にもたらす影響」と「それに対する賛成・反対」という軸で、経済認識を4つのモデルに分けた。
従来の「オールド資本主義」では「環境や社会などCSR(企業の社会的責任)への配慮は企業利益に悪影響を与える」と考えられてきた。
世間に対する見栄えのため「本当は利益を落とすからやりたくないけれど」形ばかりの取り組みをしてきたというのが実態。
これに反する「脱資本主義」の立場では「CSRへの配慮が企業利益を落とす」ことを認めつつ「企業利益ばかりを追求する姿勢に反対」し、環境への影響、社会への影響とバランスを取ることを訴えた。
一方「ニュー資本主義」は「CSRに配慮した経営は長期的視点では高い利益を上げる」という立場に立ち「企業利益のためにもCSRを意識すべき」だと主張する。
また「CSRへの配慮が利益を上げる」という立場を取りつつ、そこには欧米帝国主義などの陰謀があるとする「陰謀論」もある。
「オールド資本主義」から「ニュー資本主義」への移行は段階的に進んだ。
1990年代から「環境や社会に対する企業の責任」は訴えられてきたが、経済的利益と相反すると捉えられ広がらなかった。
流れが変わる契機となったのは「リーマンショック」だという。
当時日本では「コストカットのためCSRを切り捨てる方向に動いていったが、欧米企業では、リスクに対する「長期的なサステナビリティ(持続可能性)」に目が向いた。
例えば、海洋資源の乱獲は短期的には稼げても、長期的な視点で見ると持続可能性を食いつぶしている。
短期視点で見て企業利益に悪影響を与えるように見えるCSRも、長期視点では利益増大に資するものだという考え方が広がり出した。
また、太陽熱発電や風力発電など「再生可能エネルギー」のコストが下がっていったことも背中を押した。
ESG(Environment、Social、Government)の視点を組み込んだインデックスファンドが、通常のファンドを上回る成績を上げ始めたこともあり「ESGは儲かる」という認識が生まれ始めた。
この動きは、欧州で特に顕著で米国・アジア諸国もこれに続いた。
日本でESG思考が定着するのは遅かったが、それでも2010年代後半に入り、動きが出始めている。
感想
「環境や社会への配慮は、金儲けの邪魔だけどイメージ戦略上、とりあえずやっておく」というのが、いまだ本流だと感じている。
長期的視点でみれば、環境や社会問題への配慮が良い影響を及ぼすのは間違いないと思う。
とはいえ、会社経営者が、将来よりも自分の任期中の成果を優先するのは当然だし、人が自分の寿命を超えた先のことを、自分事として捉えるのは難しい。
本書で説明されている通り、例えば企業経営者であれば「長期的目標への施策を評価基準(KPI)に組み込んでいく」ような考え方が必要なのだろう。
「長期視点」が重要だ。